なぜ加害者は「ブレーキを踏んだが、間に合わなかった」と供述
本件を報じた読売新聞(2020年3月10日朝刊、車にはねられ重体=滋賀)によると、事故は8日午後11時20分ごろ、滋賀県彦根市本町の県道で発生。自宅近くの横断歩道を渡っていた瞳さんが乗用車にはねられ、頭などを強く打って意識不明の重体になりました。
彦根署は乗用車を運転していた男性会社員(43)を自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致傷)の疑いで現行犯逮捕しました。この会社員は「気づいてブレーキを踏んだが、間に合わなかった」などと話していると報じられていました。
現場は、信号機のない片側1車線の直線道路です。見通しはよく、しかも、歩行者が守られるはずの横断歩道上です。なぜこんなことが……。
病院に到着した翌日、警察から事故の詳細を説明された父親の勝さんは、思わず怒りがこみ上げたと言います。
「警察によれば、加害者の車(トヨタ・エスティマ)は、瞳に衝突する直前、制限時速40キロの県道を約30キロオーバーして走行していたそうです。しかも、現場は見通しのよい直線道路。普通に前を向いていれば、渡ろうとしている歩行者がいることはわかるはずです。いったい加害者はどこを見ていたのか、どうしても納得できませんでした」
夜になるとライトアップされる彦根城を見ながら、堀端の歩道をウォーキングするのが好きだったという瞳さん。事故発生から4日後の3月12日、両親の懸命の祈りもむなしく、一度も目を開けることなく、息を引き取りました。21歳でした。
検察官の一言に遺族は耳を疑った
事故から半年後、加害者の男は「過失運転致死」の罪で起訴されました。起訴状には、以下のように記されていました。
『被告人は(中略)速度を調整せず、考え事にふけって、前方左右を注視することなく、同横断歩道を横断する歩行者の有無及びその安全確認不十分のまま漫然時速約70キロメートルで進行した過失により(中略)横断歩行中の坂本瞳を前方約23.1メートルの地点に初めて認め、急制動及び右転把の措置を講じたが間に合わず、同人に自車左前部を衝突させて路上に転倒させ、よって同人に急性硬膜下血腫の傷害を負わせ、(中略)死亡させたものである』