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警察庁資料によると、昨年は448万件の取り締まりが行われています。日々の取り締まりはもちろん重要ですが、「ながら運転」を厳罰化したのであれば、重大事故が起こったときこそ、その視点に立った捜査が不可欠ではないでしょうか。

先述した検察官の対応は、何のための厳罰化なのかと考えざるを得ません。被害者や遺族の声に寄り添わず、加害者の一方的な供述を鵜呑みにした不十分かつ不誠実な捜査を肯定する検察の姿勢は極めて問題だと言わざるを得ません。

「瞳の死が、尊い命を守るために少しでも役立ってほしい」

法務省は2024年2月、「自動車運転による死傷事犯に係る罰則に関する検討会」をスタートさせました。この検討会では、「ながら運転」を含め、危険運転のあり方について議論が予定されているとのこと。

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しかし、捜査の現場では捜査すら十分にされていない現状があります。仮に危険運転になっても、現場が今まで通りでは更なる厳罰化の意味はなくなってしまいます。

坂本さん夫妻は、今回、法務大臣に送付した「要望書」が議論のたたき台になり、前方不注視の事故発生時、携帯電話やスマホの押収、通信履歴等の捜査が確実に実施されるよう願っているといいます。

「21歳と10カ月……、この先、叶えたい夢がまだまだたくさんあったはずなのに、これまでの努力、希望、未来、すべてが奪われてしまいました。でも、瞳は、人一倍責任感の強い人間でした。今、考えると、自らの死をもって、交通事故捜査の原点を考える機会を作ったのかもしれません。瞳の死が、これからの交通事故抑止につながり、尊い命を守るために少しでも役立ってほしいと願っています」

柳原 三佳(やなぎはら・みか)
ジャーナリスト・ノンフィクション作家
1963年、京都市生まれ。ジャーナリスト・ノンフィクション作家。交通事故、死因究明、司法問題等をテーマに執筆。主な作品に、『私は虐待していない 検証 揺さぶられっ子症候群』(講談社)、『自動車保険の落とし穴』(朝日新書)、『開成をつくった男 佐野鼎』(講談社)、『家族のもとへ、あなたを帰す 東日本大震災犠牲者約1万9000名 歯科医師たちの身元究明』(WAVE出版)、また、児童向けノンフィクション作品に、『泥だらけのカルテ』『柴犬マイちゃんへの手紙』(いずれも講談社)などがある。■ウェブサイト