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「『うる星』16ページを3日間で」「先生は物語を“作って”いないみたい」…担当編集者を驚愕させた、高橋留美子の創作術に迫る!

高橋留美子・歴代担当編集者インタビュー #3

source : 週刊文春Webオリジナル

genre : エンタメ, 読書

note

『MAO』の連載前、高橋留美子が“一気読み”した作品

―― 打ち合わせは最長でどれくらいに及んだのでしょう?

有藤 『うる星』ではないのですけれども、『忘れて眠れ』だったか『人魚は笑わない』だったか、増刊号の読み切り制作は丸々一晩かかりましたねえ。高橋先生とずっと向かい合わせに座って、雑談も挟みつつ……。トータルで14時間くらいだったかな。

 我々は二人とも沈黙が苦手ではなかったのでお互い「うーん……」と思索にふけったり、先生に夜食を作っていただいたり(笑)。私は続きものを担当したことがないので、『犬夜叉』や『MAO』がどうやって作り上げられているのか興味がありますね。

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―― 森脇さんは『MAO』で続きもの、『境界のRINNE』では『うる星』と同じく読み切り型、と両パターンを経験されています。

森脇 やっぱり続きものの方が進みは早かったですね。一話完結はすごく大変で。有藤と同じように「今回はどのキャラをメインで出しますか?」「こんな怪異を入口にしたら面白くないですか?」とネタを出しながら、徐々に形作っていきました。

『境界のRINNE』より。死神みたいな少年・六道りんねは同級生の真宮桜とともに怪事件に挑む/『高橋留美子原画集』より

――『MAO』を新連載としてスタートするまでのお話もぜひ聞かせてください。2017年に『境界のRINNE』が完結した後、高橋先生は1年半お休みされました。その間にアガサ・クリスティの全作品を一気読みされたそうですが、それが構想のきっかけに……?

森脇 結果としてそうなりましたが、先生は純粋に「いつかアガサ・クリスティを読破したい」と希望されていたようなんです。ただ読み進めるうちに、こうしたミステリー色が強い作品、なおかつ「自分が本当に好きなダークファンタジーに挑戦したい」という思いが芽生えていったと。

 実は一番のキーワードになったのは、陰陽師の芦屋道満なんです。安倍晴明のライバル的存在でいわば悪役なんだけれど、魅力にあふれている。「そんなキャラクターを描きたい」と強くインスパイアされて企画が形になっていきました。

―― 確かに『MAO』には様々な陰を背負ったキャラクターが登場します。主人公の一人・摩緒は陰陽師の名家・御降家の後継者に抜擢されますが、その実は生贄であり、裏では師匠が兄弟子たちに「摩緒を呪い殺せ」と命じていた。誰が敵で誰が味方なのか、業と思惑が複雑に交錯するミステリアスなストーリーです。

森脇 悪人かと思ったら善人で、そうかと思えば善人が悪人に翻る……。先が読めない「反転」を先生ご自身も非常に楽しんで描かれています。それこそ岡本も、先生とお話しするなかで「そうだったのか!」と驚くような真相があったんじゃない?

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