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「あんたなんか毒親だ」妻と子の間違いを正しているつもりだったが…モラハラ・DV加害者は変わることができるのか

『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』中川瑛さんインタビュー

note

 実の父親からモラハラ・DVを受けて育った女性・奈月は、つい婚約者に辛く当たってしまうことに悩み、会社でも厳しい態度で部下を委縮させてしまっている。トラウマを抱えた奈月は「加害の連鎖」から抜け出すことができるのか……。

 コミック『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(KADOKAWA)は、かつて“毒親”だった男性とその娘を描き出した作品だ。2022年12月に刊行された前作『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』につづき、「加害者は変わることができる」という原作者・中川瑛さんの想いが込められている。

 ここでは、自らもパートナーに加害をしてしまった過去があり、「モラハラ、DV加害者のための変容支援コミュニティ」GADHAによって変わることができたという原作者の中川さんに、作品内でも描かれた「加害の連鎖」や「加害者を許すべきか?」というテーマについて伺った。(全5回の2回目/最初から読む

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『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』

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加害者は変わることができる

――続編の発売おめでとうございます! 前作『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』は加害者側の心理を描いて話題となりましたが、前作発売後の読者の反応などいかがでしたでしょうか。

中川瑛(以下、中川) Amazonのレビューが1000件を超えた際には、加害者変容についての内容がこれほどまでに多くの方に届くとは思ってもみなかったため、驚きました。

 表紙のイメージから、最近流行の復讐劇や加害者が報いを受ける「ざまぁ系」の物語と見なされがちだったと思います。しかし、読者から「全然違う結末になって驚いた」「感動した」「DVの根本的な解決には加害者の支援も重要だ」といった肯定的な反応を得られたことが、非常に嬉しかったです。私が伝えたかったのは、「加害者は変わることができる」というメッセージでした。

 一番嬉しかったのは、『99%離婚』を読んだことでGADHAに参加するようになった方が非常に多かったことです。発売から1~2ヶ月で、この作品を読んでGADHAに参加したという方が100人近くいらっしゃいました。その後も、参加者の参加経路を伺うと『99%離婚』が関連することが非常に多くなりました。

前作『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』

 モラハラやDV加害者としてネットで検索していて、この漫画を見つけて読んで「自分も変われるかもしれない」と思って参加した人もいます。パートナーに勧められた人が、半信半疑で読んだら「まさに自分だ」と気づけたという事例もたくさんあります。加害者にとって受け止めやすい、加害者が変わる過程や、変わった後にどのような幸福が待っているかを描いたことが、この作品の大きな価値であったと考えています。

 加害者の変容は、非現実的に思えたり、難しいと捉えられがちですが、この作品が、モラハラやDVについて知り合いやパートナーに読むことを勧められる一つの手段となり、社会に新たな価値をもたらしたこと、書籍よりも手に取りやすいコミックという形で、加害者変容に関する情報に気軽に触れられるコンテンツを提供できたことが、非常に良かったと感じています。

 どうしてもDV加害者に関する情報は「変われない」「すぐ逃げる方が良い」といった、被害者支援のための文脈が多かったからです。それはもちろん被害者支援のためには重要な情報ですが、加害者にとっては認めることのできないスティグマを付与されるように感じて、結果、加害を認められず変われないという状況も生み出していたと思っています。

 しかし、漫画にも繰り返し書いてある通り、被害者には加害者を支援する義務や責任はなく、加害者が必ずしも変わるわけではないという点には注意が必要です。その点を指摘するコメントも多くありました。「逃げるべきだ」とか「こういうのはほとんどありえない」といった意見もあり、それは重要な指摘でもあると思っています。