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水原が持つ「女のリアリティー」

『魔女の封印 上』(大沢在昌 著)文春文庫

 普通、男性作家が描く女性は「こんな女いないよ」と女性陣に言わしめることが多い。従順だとか優しいとか、待っていてくれる、許してくれる都合のいい存在。ロマンチックな男の夢想を託した女性像だからだ。ところが水原ときたら、ものの見方や発言に驚くほどリアリティーがある。

『魔女の笑窪』で初登場した時、一夜限りの相手をこう斬り捨てる。〈男が射精(だ)したいとき女をナンパするように、女もやりたいときがある。つまりは道具でしかないのだ。なのに道具以上だと自分を錯覚する。ただの自惚(うぬぼ)れだ〉

 本書では、誰かを殺した後の気持ちを聞かれて〈死んで当然だ、とそのとき思い、そして忘れる〉とさらり。

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 また、〈ひきしまった肉体やひたすら奉仕できる体力、なめらかな肌といった上べの歓びだけを、若い男には求めた〉(『魔女の封印』)と年下と寝る理由を明かす。

 本来女は率直で辛辣なのだ。でも、実社会では周囲に気配りした方が生きやすいと知っているから、爪を隠している。ここには本音があふれている。だからこそ水原の言動に胸のすく思いがし、憧れるわけだ。