『魔女の後悔』(大沢在昌 著)文藝春秋

 4月19日に発売される大沢在昌さんの新刊『魔女の後悔』

 売春島を生き抜いた闇のコンサルタント・水原を描く〈魔女〉シリーズの最新刊です。9年ぶりとなる今作では、ある一人の少女との出会いが水原の運命を変えてゆきます。

 韓国財政界を揺るがす巨額詐欺事件の主犯を父に持つ少女と、水原を結ぶ暗い糸とは――。

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 大沢ハードボイルドの真骨頂、ここにありです。

 発売を記念して、シリーズ3作目である『魔女の封印』(文春文庫)に収録されている、文庫解説を全文公開します。(全3回の第3回)

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 日本のミステリー、ハードボイルド史上、こんなにカッコいい女性主人公はちょっといない。今回もラストはあっけにとられた。この女はこんな決着の仕方を選ぶのか。しかし、これしか考えられないなという展開。やはり、魔女水原から目が離せない。

『魔女の笑窪(えくぼ)』(2006年刊、文庫は09年)『魔女の盟約』(08年刊、同11年)に続くシリーズ3冊目となるのが本書『魔女の封印』(15年刊)である。

 第一作『魔女の笑窪』の最初の何章かで、彼女のライフスタイルを垣間見ることができる。午後5時に起きて、東京・麻布台にある事務所に出るのはたいてい午前0時過ぎ。闇のコンサルタントとして裏社会を生きる。駐車場に並ぶのはお抱え運転手がハンドルを握るメルセデスにポルシェ911、アコード。

 闇の投資も辞さず、金に不自由はない。必要に応じて拳銃を手に入れ、ためらわず引き金を引く。男の性格を一目で見抜く力を生かし、タフに冷徹に怜悧に仕事をこなすクールビューティー。気晴らしは高級リゾートでの男遊びとくる。

 この水原の活躍を女性読者が知ったら、ハートを射貫かれること請け合い。現に私がそうだ。