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「日本のミステリー、ハードボイルド史上、こんなにカッコいい女性主人公はいない」大沢在昌が描く「女のリアリティー」

大沢在昌〈魔女〉シリーズの魅力に迫る! #3

2024/04/21

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書

note

 最後にシリーズにおける水原という人物像の幅の広がりに触れておきたい。

 クールさで私たちをとりこにした水原だが、第1巻後半で地獄島育ちの秘密を元警察官で元男性の星川に突然、話す気になった箇所がある。のちに水原への助力を続けることになる星川にぽつりぽつりと語る。星川が、水原の“相棒”になり得た印象的な場面だ。

 第2巻では、自らを窮地から救ってくれた元女刑事に恩義を返す。冷徹でありながら違う一面ももつ人となりについて、第3巻で頂点捕食者の堂上はこんなふうに分析する。〈自分より立場の弱い者、庇護を必要としている者に対しては……利益を犠牲にしても手をさしのべることがある。常に、とはいいません。……自分しかできないと気づいたときに限られる〉。ああ、水原はまさにそういう人間だとうなずいてしまう。

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 そして年下の西岡タカシに対する特別な感情がある。水原に恨みを抱き、第2巻に続き第3巻でも登場してくる。相変わらず図太く挑発してくるが、水原は〈姉か母親のように、あの子を思っている〉と独白する。〈どれだけ大きくなって仕返しにくるかが、ちょっと楽しみなの〉とまでいう。

 水原にどんどん血肉がついて、声が聞こえるかのようだ。願わくば、また水原に会いたいのです、大沢さん。

(2018年12月)

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