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ハードボイルドであり、SF的設定あり
問題は、その頂点捕食者である。一般的には生態系の中で最上位に位置する生きもののこと。ノルウェーの生物学者ヘンリック・オルセンが提唱した理論によると、人類が70億を超えるほどいる現状で地球の頂点捕食者でいるのはおかしい。〈人類は滅亡するか、自然の摂理が新たな頂点捕食者を作りだす〉だろうというのだ。
これを読んだときはなるほどなとうなり、背筋が寒くなった。こういう警告は実際にあるんじゃないかと早速ネットで検索してみたら、どうやらこれは大沢さんの創作らしい。しかし、地球環境を破壊している我々の罪を思うと、〈これだけ数の増えた人間が頂点捕食者であるのは自然に反している〉と言われれば、どこか納得するものがある。現実から予想できるほんの少し先の未来のあるかもしれない形を提示して、説得力がある。しかも、今まで頂点捕食者がいても世界の片隅で孤独に生きるしかなかったものが、ネット社会であるからこそ仲間を見つけるチャンスを得たと展開されると、いちいち膝を打ってしまう。
そういえば、『天使の牙』(1995年刊)『天使の爪』(2003年刊)に登場する脳移植で生まれ変わった女刑事がいた。「天使」と「魔女」で好対照の女主人公。SF的設定も似ている。こちらも読み始めたら、あっという間に手に汗握って物語に没頭してしまった。エンターテインメント小説を構築する手際にほれぼれする。