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「元手もコネももたない人間が始められる金儲けが犯罪なの」

 水原の男性分析は面白く、さまざまな男の見本市を見る思いがする。大沢さんは誰かモデルを思い浮かべているのだろうか。

 男女論もある。〈女は金で買えるサービスが好きだ。食事の内容よりもレストランの雰囲気を優先したり、何人ものエステティシャンに奉仕されるのに歓びを感じるのは、……それをうけられる自分の立場に酔う楽しみがあるからだ〉〈男は、女を楽しませることによってしか楽しめない。楽しませた女たちが、その夜ベッドルームで、どれだけの返礼をしてくれるかだけを期待してやってくるのだ。/男は損な生きものだ。だが損をしていると感じないのが、たぶん男の才能なのだろう〉(『魔女の笑窪』)

 

〈ビジネスの元手もなく、コネももたない人間が始められる金儲けが犯罪なの〉(『魔女の封印』)などと社会の流れを切り取ってみせてもくれる。

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 何となく感じていたり、まったく気づかなかった人間や社会の様相が言葉できっちり説明される快感がある。現実社会を緻密に映し出した物語世界の上で、地獄島をはじめとした大胆な設定も自由に異彩を放つ。

 このシリーズはまた、一冊ごとにイメージも規模もぐんぐん変わっていく。

『魔女の笑窪』は地獄島に搾取された女の逆襲だ。背景を彩るのは日本の裏社会と韓国勢力の進出。今から思うと、水原を水原たらしめた地獄島との対決を早くも1巻で終わらせてしまってもったいない気がするが、大沢さんはそんなけちな作家ではない。

 第2巻『魔女の盟約』の舞台は釜山、上海、日本と俄然広くなった。上海の元女刑事の復讐を軸に、民族マフィアの萌芽に巻き込まれる。

 そして『魔女の封印』は「頂点捕食者」との戦いだ。