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――毎日、店長一人で店を回しているんですか?

藤山 いやいや、アルバイトの方を雇って交代しています。ただ栗を焼くには技術が必要なので、1カ月くらいかけてみっちり研修をしてからお店を任せています。

――栗を焼くのは難しいんですか?

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橋本 栗は60%くらい水分を含んでいるんですが、ただ釜で焼くだけだと水分が抜けて甘みが失われてしまう。なので焼きながら水飴をかけてコーティングして、水分を逃さないようにするんです。釜で焼きながら、栗が乾燥して色が変わるのを見極めて水飴をかける作業を何度も繰り返すのですが、栗は生き物ですし季節や天候で温度や湿度も異なるので、かけるタイミングと量が大事。ですから、栗の色の変化をどう見分けるかという指導をしています。時々「甘みを足している」と勘違いされるお客さんがいるのですが、栗の皮から水飴が染みこむことはなくて、あれは水分が飛ばないようにしてるんですよ。

栗を焼く石は「秘伝のうなぎのたれのようなもの」

――釜に放り込んでおけば焼けるというものではないんですね。向いているタイプ、というのはあるんですか?

藤山 大勢の人が前を通りますが、お店の中は1人なので、それが気楽だという人には向いてると思います。わずらわしい人間関係がなくていい、という人もいますね。

「甘栗むいちゃいました」のヒットで売り上げが激減したことも

――わかるような気がします。冬はアイスも売ってますよね。

藤山 栗の売上げが落ちる夏場に、アイスバーを売ったりはしていますね。まあうちは栗屋なので、基本は栗を食べてもらいたいですね(笑)。

 

――他の物を売ろうとはあまり考えたことはない?

藤山 20年ほど前に「甘栗むいちゃいました」が大ヒットして売り上げが落ちた時は、ちょっと考えましたね。だけど、うちの規模で栗をむいて売るのは難しいんですよ。栗をむく機械の見学に中国の工場へ行ったことがありますが、1台何千万円もして回収するのが難しいし、そもそも機械が大きくて店に入らない。しかも栗をむいてしまうと、スーパーや百均の商品と競合することになるので、どうしても割高に見えてしまうんです。手間とコストをかけたうえで安売りするのはさすがに難しかったですね。