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緒方の妹の旦那に新たな部屋を賃貸契約させる

(11)長行マンション30×号室

 裕子さんが曽根アパートから逃走後、松永らが“金づる”として狙ったのは、緒方の実家だった。松永らは(7)東篠崎マンション90×号室(※前編に登場)と(8)片野マンション30×号室をベースに、親族の緒方純子が殺人に手を染めているとして、世間体を気にする緒方家の親族を次々と北九州市に呼び出し、取り込んでいった。

 そうした流れのなかで、緒方の妹の智恵子さん(仮名)とその夫の隆也さん(仮名)、彼らの娘と息子の一家4人は、97年9月から(8)片野マンション30×号室で同居を強いられていた。しかし、大人数で目立つことを恐れた松永が、新たな“隠れ家”として、隆也さんに命じて、彼名義で97年11月6日から契約させたのが、6階建てのこのマンションの30×号室である。

幼稚園勤務時代の緒方純子(1983年撮影)

 現在も長行マンションは姿を変えずに残っている。北九州の中心部からは離れているが、幹線道路に面して交通の便もよく、いまは新たな住人が住んでいる。

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(12)片野第3マンション702号室

 前記(11)長行マンションを借りたのと同じ理由で、松永が隆也さんに同マンションの3日後である97年11月9日に契約させた9階建てのマンション。なお、前編の冒頭で記しているが、同時期に他にマンション2部屋を隆也さん名義で契約させたとの情報がある。こうして複数のマンションの賃貸契約を結んだが、松永のもとに「警察が松永と隆也さんが一緒にいることを把握している」との情報が入り、松永は入居を断念したという。

 現在も片野第3マンションはそのままの姿で残っており、北九州市の中心部に位置する好立地ということもあり、新たな住人が住んでいる。

松永に唆されるままに真由美さんが自身の名義で契約

(13)板櫃マンション10×号室

 98年6月までに、緒方家の親族6人を殺害(うち1件は傷害致死)した松永と緒方は、新たな“金づる”を求めていた。そこで彼らのターゲットになったのが、佐賀県佐賀市に住んでいた主婦の田岡真由美さん(仮名)である。双子の母親である彼女は、90年前後に松永が広告を出していた架空の探偵社に人探しの相談をして、初めて松永と知り合った。

 それから間が空いていたが、広田由紀夫さん殺害後の96年に、当時から偽名を使う松永が彼女に電話。夫婦関係に悩みを抱えていた真由美さんは、以来、たびたび松永に相談の電話をかけるようになっていた。

 やがて松永に唆されるままに子供を連れて家を出た彼女が、自身の名義で00年8月30日から借りたのが、この2階建てマンションの10×号室である。

 現在も姿を変えずに残っている板櫃マンションだが、設備はだいぶ老朽化し、彼女と子供たちがいた部屋は空き室となっていた。