清美さんが祖母の再婚した夫と警察に駆け込み、逮捕へ
(14)泉台マンション10×号室
田岡真由美さんに対して、松永と緒方はともに偽名で接触していたが、緒方の提言で真由美さんは松永らに子供を預け、山口県の飲食店で出稼ぎの仕事をすることになる。そのため、ふたたび真由美さんの名義で01年8月7日から借りたのが、この2階建てマンションの10×号室だった。
松永と緒方は、当時17歳になっていた広田清美さんに子供たちの面倒をみるように命じ、同マンションでは清美さんと、松永と緒方の子供2人、真由美さんの子供2人で暮らしていた。この部屋には「生活ルール表」が貼られており、松永らの長男が「特」、真由美さんの長男が「大」、真由美さんの次男が「中」、松永らの次男が「小」として、トイレに行く順番や、日々の生活での役割などが決められていた。
だが、清美さんを連日のように(7)東篠崎マンション90×号室に呼び出し、通電による虐待を繰り返していたことから、彼女が逃走。1度は連れ戻されるも、2度目の逃走で祖母の再婚した夫とともに警察に駆け込み、松永と緒方が02年3月7日に逮捕されたのだった。同日、このマンションで松永らの9歳と5歳の息子、真由美さんの6歳の双子の息子の計4人が保護された。
現在この泉台マンションは、外見は当時のままで名前を変えて残っている。子供たちが保護された部屋には、新たな住人が入居していた。
片野マンションのその後は…
これが松永と緒方が関係した、北九州市内の住居の現状である。最後に冒頭で触れた(8)片野マンション30×号室についての説明を加えておく。
この部屋では、96年2月26日に広田由紀夫さんが、そして97年12月21日から98年6月7日にかけて緒方家の親族6人が殺害・解体された。福岡県警は松永と緒方の逮捕後、証拠保全のために捜査が終結するまで、同部屋を借り上げている。
そして現在、この部屋には住人が存在する。
片野マンションについて、事情を知る人物は私に語った。
「30×号室については、前から短期間で住んだり、その人が出ていって長らく空き室になったりということはありました。でもいま住んでいるのは、5年以上前からいる50代の女の人。もちろん事件のことは知っていますが、家賃が安いからということで選んだようです。ただ、いまあのマンションは新規住人の受け付けはしていません。そのため住人は減る一方です。全ての居住者が出た段階で、取り壊すつもりなのでしょう」
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この凶悪事件の詳細は、発覚の2日後から20年にわたって取材を続けてきたノンフィクションライターの小野一光氏による『完全ドキュメント 北九州監禁連続殺人事件』(文藝春秋)にまとめられています。
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