クラスの女子に「あまりにひどい」と反対されて
――どんな内容だったんですか?
金子 クラスに好きな子がいる少年に盗癖があり、女の子の体操服を盗んでしまう。その体操服を戻そうとした時に女の子が目撃して、軽蔑されて、それで学校から去っていく。20分ぐらいの。タイトルは『斜面』と言うんですけど。斜面を転がっていくという感じで。
――シリアスですね。
金子 シリアス。主人公は映画の中では一言もしゃべらない。
――それは実験的ですね。
金子 そうですね。そういうシナリオを自分で書いて、監督したんだけど。主人公が教室で盗んだ体操服を戻す時に体操服に顔を付けるようにしたら、スタッフの女の子からすごく反対されたんです。
――いやらしいから?
金子 それはあまりにもひどいと。僕は、体操服の匂いをかぐというふうにやりたかったんだけど、スタッフの女の子が駄目だと言うから、民主的な考え方ではこれはやめたほうがいいと。
――そこは葛藤したんですね。自分の作家性と。
金子 そうそう。その時は作家性とかあんまり分からなかったから、これはクラスを盛り上げる戦いだみたいな面があるから、それでやめたんです。そして、高校1年の時の文化祭で上映して、大成功だったわけですよ。
――みんなすごく喜んだ。
金子 喜んで。で、全都8ミリコンテストというのがあって、佳作で入選した、その時の批評に「プロっぽい」というふうに書かれて、ふむふむと思い、その辺から映画監督になりたいと思うようになった。
――で、2年でまた撮るんですね。
金子 そうですね。これはコメディで、ライバル同士でどっちが先にガールフレンドをゲットするかみたいな内容。クラスのかわいい女の子をリストアップして写真を貼って、次々にアタックして、バツを付けていくみたいな。
――作風がガラッと変わりますね。
金子 ガラッと変わる。2年の時はそれで、3年になったら受験でクラスではもう作れないから、クラブ活動として撮った。
恋愛失恋ものなんですけど、シリアス。過去はカラーで現在は白黒という『ジョニーは戦場へ行った』の手法で、カラーで描かれる過去の恋愛失恋が現在の白黒の暗い気持ちにつながっているという。『水色の日射し』という青春ドラマです。これは読売の8ミリフェスティバルで入賞したんですよ。
――「日本を記録する8ミリフェスティバル」ですね。
金子 そう。あれに入賞したんだけど、審査員の大島渚監督が「大体の高校生が作る映画は髪の長い男の子が公園でウロウロしてるだけだ」みたいなことを講評で書いて、自分のことかとチキショーと思った。
言われるとおり、公園で髪の長い男の子がパンタロンのジーンズを穿いてウロウロしてるみたいな、そういう場面があるから。大島監督はもっとちゃんと主張しろみたいな意味でおっしゃったのかもしれませんね。
※注 スプライシングテープ 8ミリフィルムを編集する時に使用する透明なテープ。