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ロマンポルノの現場で出会った『家族ゲーム』森田芳光監督 <日活に助監督として入社>

ロマンポルノの現場で出会った『家族ゲーム』森田芳光監督 <日活に助監督として入社>

僕たちは8ミリ映画作家だった 金子修介編 #3

2024/06/23

source : 週刊文春CINEMA オンライン オリジナル

genre : エンタメ, 社会, 映画

note

『家族ゲーム』の森田さんは、自信を持っていた


――そうなんですね。他の監督との違いって何か具体的に感じられるものってありました?

金子 全然違う感じでしたけど。ロケハンに連れて行った瞬間に、「ここ面白いよ」と言うのは…そういう監督はいないので。

 大体「うーん」と考える人が多いんだけど、製作部が用意してきた場所に連れて行った瞬間に「面白いね」と言うから、楽な監督だな、みたいな感じがした。

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金子修介監督 ©藍河兼一

 自分で役者の代わりに動いて「こうしたい」とちょっと滑稽な動きをするのを見て、近しい感じもあったし。知らないことがあると、それを口に出して言っちゃうんですよね。そうすると、かわいらしいというふうに思えたりして。

――知らないことは知らないと言える人だったんですね。

金子 そうですね。

――『家族ゲーム』は決定打というか、森田さんの文法がピタッとはまった作品でしたよね。

金子 『家族ゲーム』の森田さんは『ピンクカット』の時とは比べられないぐらい自信を持っていた。

 当初『家族ゲーム』は2台のカメラ=ツーキャメでやりたいと言っていたんです。食べているアップを撮って、カッティングで細かくやりたいと。

『ピンクカット 太く愛して深く愛して』 発売元:日活/ジェネオンエンタテインメント

 でも予算上「ツーキャメができなくなりました」とカメラマンの前田米造さんが言ったら、その瞬間に森田さんは「壁バラしてみて」と言う。壁バラし(*注1)は「ピンクカット」の時に経験していましたからね。

 最初は家族4人で座ったら1人は背中になるから、そうしたらまた壁をつけて反対側から撮らなきゃいけないんじゃないかということをやっていたら、森田さんが「机を半分にして4人並べて、手前にキャスターで食べ物を」と言い出して、スタッフも「それは面白いじゃないか」となったんです。