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テクニックは徹底すべきだ

 <「金子監督の8ミリを観たい」と同席していた緒方明監督(※注2)がここで参入 >

緒方 『ピンクカット』は全ショットドリー(※注3)ですよね。

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金子 そうそう。

緒方 あれがすごいんですよ。フィックス(※注4)がないんですよ。『の・ようなもの』と逆のことをやっているんです。

『の・ようなもの』は全カットフィックスで。『ピンクカット』はとにかく動いているんです。

金子 だけど、全カットドリーというのも、最初それでつないだらテンポがなくて。

 もうこれは失敗だと僕は思ったけど、森田さんは編集室にこもって、いろいろ止めるところも作って、テンポが出てきて、音楽を入れたら楽しくなった。

 森田さんはあの時、テクニックは徹底すべきだと言っていた。でもドリーというのはここぞという時に使うものだから、全部動いていると効かない。止めるところがないと駄目だというのが撮った後で分かったんです。

『家族ゲーム』 発売元:キングレコード

――そういう実験ができるのはすごいことですね。さっき見た金子さんの『プリズムタワー』でも、ズームをしつこく使っていたじゃないですか。あれは意識的だったんですか?

金子 そうですね。

――作品を通してのカメラワークのねらいがズームでした。

金子 『小型映画』(※注5)の8ミリ教本みたいなものがあって、やっぱりズームはここぞという時に使うべきだ、みたいなことが書いてありました。大体『小型映画』ですよね。お手本というか、教科書。

――資料としてはそれぐらいしかなかったですもんね。

 

※注1  壁バラし 取り壁(セットで取り外すことのできる壁)壁を外すとカメラを部屋の外に置いて引いた画を撮ることができる。 
※注2  緒方明監督 8ミリ『東京白菜関K者』(1980)でPFF入選。代表作『いつか読書する日』『のんちゃんのり弁』。
※注3 ドリー カメラを動かして撮影する技法。移動撮影。
※注4 フィックス 固定撮影。
※注5 『小型映画』 玄光社が刊行していたアマチュア映画の月刊誌。1956年創刊、1982年廃刊。