ご訪問を祝うがごとく抜けるような青空
被災地では事前に宮内庁からご訪問地とそのおおよそのご予定が発表されていたこともあり、前日から「一目でいいからお目にかかりたい」やの「どこの地区の誰それさんとお話交わされるらしい」やの明日の天気に至るまで、もうご訪問の話で持ち切りであった。
4月12日はまさにご訪問を祝うがごとく抜けるような青空が広がった。常宿のかほく市の宴会場付きの宿を早朝に出発した。ご訪問は穴水町と能登町に午後ご訪問と発表されているが具体的な場所やご訪問の正確な時間までは公表されておらず、周辺の交通事情を考慮すれば、早くに着くに越したことはない。
かくして朝9時に穴水町役場に着くや早くも周辺道路わきには地元住民とおぼしきお年寄りが座り込み、両陛下のご到着を今や遅しと待ち構え、そこかしこで警備のための警察官が危険物の捜索のためかパトロールを続けていた。役場の後ろは地震のため、がけ崩れを起こしており、黒い土嚢が並べられていることぐらいが被災地の自治体の役場を思いおこさせる程度。
正面玄関前の臨時駐車場には普通に職員の車が停められていたが、その敷地外にはカラーコーンが並べられ、その内側には緑の腕章を巻いた「皇宮警察」の職員が三脚を立て早くもスタンバイしていた。
正午前にはそこかしこに人垣が
10時をすぎると、ぱらぱらと、正午前になると、沿道にはそこかしこに人垣ができていた。しかし警備していた警察官には緊張感はあまり見られず、その対応も極めてソフト。小型のハンドマイクを手にした仕切り役の若い警察官たちはまるで警視庁のDJポリスである。
「皆さーん、今日は暑くなる予報がでてますから、脱水症にならないように、こまめに飲み物を、遠慮せず口にしてくださーい。まだ時間がありますから、お手洗いはまだ簡易トイレですが、裏にありますからご遠慮なく行ってくださーい」。まわりはすでに二重三重に人垣ができており、ほんとんどが地元住民、しかもお年寄り、さらにしかも女性が多かった。
そこに学校帰りの少女らと母親らも加わった。
「ねえ、今日愛子さまも来るの?」
「ううん、愛子さまのお母さまがお見えになるのよ」