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「プロで通用しない」「海外なんて無謀だ」高校時代無名だった長谷部誠(40)は、なぜサッカー選手として大成できたのか?

『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』より#2

2024/05/18
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挑戦した経験のある人にだけわかること

 僕はサッカーを通じて、いろいろな経験をさせてもらった。今自分が言えるのは、挑戦し続け、その場その場で全力でもがき続けると、人間は変われるということだ。

 海外に移籍した選手が試合に出られなかったら、メディアの人たちはすぐに失敗だったと報じようとする。けれど僕は全然そう思わない。たとえ試合に出られなかったとしても、貴重な経験をしているはずだからだ。

 スコットランドで活躍した俊さん(中村俊輔)は、’09年夏、横浜F・マリノスへの復帰を有力視されながら、最終的にスペインに移籍した。約半年間も満足に出番がない時期が続いて、結局、’10年1月に古巣の横浜F・マリノスに移籍した。けれど俊さんはのちに、「出場時間は限られていたけれど、今回(スペイン)の移籍は失敗じゃなかった」と言っていた。

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 半年間の合計出場時間だけを見たら、成功とは言えないかもしれない。だが、一度きりのサッカー人生のなかで憧れていたリーグでプレーできる選手はひと握りしかいないだろう。それを実現できたという意味ですでに成功であり、異なるサッカー文化の国でプレーしたことで、アイデアの引き出し、プレースピードの対応など、純粋にサッカー選手としてもプラスになったものは多かったはずだ。

 あえて強い言い方をさせてもらえば、もし俊さんのスペイン移籍を失敗だと言う人がいたとしたら、その人は挑戦をしたことがない人のはずだ。挑戦した経験のある人なら、それによって何を得られるかを知っているからである。

©文藝春秋

苦しみがあるからこそ挑戦は楽しい

 僕には今後のサッカー人生のなかで、絶対にやり遂げたいことがある。

 それが何かは、実現するまでは秘密にさせてほしい。誰にも言わないつもりだ。

 その目標はすごく高いところにあって、もしかしたら自分が高校生からJリーガーになったのより難しいことかもしれない。それでも自分は、絶対にやり遂げたいと思っている。

 ちょっと背伸びをしたら、向こう側が見えてしまうような壁では物足りない。背伸びをしても、ジャンプをしても、先が見えないような壁の方が、乗り越えたときに新たな世界が広がるし、新たな自分が発見できる。今、ヴォルフスブルクでプレーしていて、焦りもあるし葛藤もある。けれど、そういう苦しみがあるからこそ挑戦は楽しいと思う。だからこそ僕は常に「難しい道」を選び続けられる人間でありたい。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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