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――映画のラストは、ドニ・ラヴァンの本当に素晴らしいダンスシーンで締めくくられます。この奇跡のような場面はいったいどのように生まれたのでしょうか?

クレール・ドゥニ 最初、シナリオの段階では、ドニ・ラヴァンが拳銃を手にする場面が最後になるはずでした。つまり、ジブチのクラブで踊るシーンがあり、その後に彼は部屋でひとり拳銃を手にする。でも撮影後の編集の段階で、実際にドニの手が拳銃を持ち上げ自分の胸にゆっくりと引き寄せるのを目にしたとき、これはあまりにも悲しすぎる、こんな終わり方は嫌だと感じたんです。そこで編集者のネリー・ケティエと話をし、この場面の順番を入れ替えることにしました。拳銃を手にした後、彼のダンスシーンが来る。そうすることで、もしかしたら彼はまだ生きているかもしれない、そんな希望のようなものを残せるのではないかと思ったのです。

 それと、あの場面について私がシナリオに書いていたのは「彼はまるで死のうとしているかのようにダンスをする」という一文だけ。それ以外の説明は一切書いていませんでした。リハーサルも何もせず、撮影当日にカメラをドニの目の前に置き、カメラをまわした。そうしてあのラストシーンが生まれたのです。

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© LA SEPT ARTE – TANAIS COM – SM FILMS – 1998

――ということは、あのダンスはドニ・ラヴァンのオリジナルの振り付けだったのですか?

クレール・ドゥニ ダンスの場面で流れるCORONAの「The Rhythm of the Night」という曲自体は、撮影前に1ヶ月間くらい、ドニ・ラヴァンと何度も聴いていました。だからあのラストシーンは完全な即興とはいえないけれど、その曲に合わせて一緒に振り付けをしたり、リハーサルをしたりすることはなかった。振り付けやリハーサルをしたとすれば、それは1カ月の間、彼が自分の頭のなかでやっていたことです。あの場でドニが踊るのを、私はワンショットで撮りそのまま映画に使いました。

5/31(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下他全国順次ロードショー

配給:Gucchi’s Free School 協力:JAIHO