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「石川県に思いを寄せてほしい」配給収入の一部を寄付…“加賀温泉の若女将”を撮った映画監督の想い

雑賀俊朗(映画監督)――クローズアップ

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 石川県の名湯・加賀温泉の若女将たちの活躍を描いた映画『レディ加賀』。オール石川ロケで、主演は小芝風花さん。見どころは、鮮やかな加賀友禅に身を包んだ女将たちの圧巻のタップダンスシーン!

 監督の雑賀俊朗さんが本作のアイディアを思いついたのは10年ほど前。やはり石川県を舞台にした作品『リトル・マエストラ』の撮影で同地を訪れた際、あちこちに掲示された着物姿の女性がずらりと並ぶ写真を見るうちに、「彼女たちが踊っているように見えてきた」という。それが、当時発足したばかりだった、加賀温泉の女将たちによるプロモーションチーム「レディー・カガ」のポスターだった。

雑賀俊朗監督

 本作の主人公・由香は、加賀温泉にある老舗旅館の一人娘。タップダンサーを目指して上京したが、いつまでたっても芽が出ない。帰郷し夢を諦めた彼女は、女将業を継ぐべく、「女将ゼミ」に通い始める。

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 そのころ加賀市では、町おこしのプロジェクトが始動。由香は若女将たちと、観光PRイベントでタップダンスを披露することになり――。

「小芝さんは、約9カ月かけてタップダンスをマスターしてくれました。ほかの女将役の方々も4、5カ月は練習漬けに。それでも間に合うか心配でしたが、さすがは俳優さんで、素晴らしい出来に仕上げてくださいました」

 若女将の中には、外国人も、元ホステスもいるという設定。これも雑賀さんが実際に温泉旅館に取材する中で出会った女将からヒントを得たという。

 画面を彩るのは、加賀温泉郷の名スポットの数々だ。山代温泉の「古総湯」、山中温泉の「あやとりはし」、片山津温泉の「浮御堂」などなど。「いいとこどりで、いろいろ詰め込みました」と雑賀さん。

「まさに石川県を元気づけるための応援ムービー。ストーリーもド直球で、皆で楽しくご覧いただけて、明るく前向きな気持ちになれる、そんな作品です。あまりに直球すぎて、ちょっと前だったら、僕自身、照れがあったかもしれません(笑)。でも、加賀で映画を作ろうと話がまとまった直後にコロナ禍が来て。だからこそ、今はこういうのが見たい! と、アフターコロナを強く意識して作りました」

©映画「レディ加賀」製作委員会

 ところが、あとは公開を待つばかりとなった先月。本作に協力してくれた多くの人たち、ロケで訪れた各所が、あの大地震によって被害を受けた。

「ショックでした。でも、映画人として今、僕ができることは何かと考え、本作の配給収入の一部(5%)を石川県に寄付することに決めました。今は、この映画を観て石川県に思いを寄せてほしい。また、被災された方々の心のケアにもなればと願っています」

さいがとしろう/福岡県北九州市出身。数多くのテレビ番組の演出・プロデュースを経て2001年『クリスマス・イヴ』で劇場映画監督デビュー。8作目の『カノン』(16)では、中国のアカデミー賞と言われる金鶏百花国際映画祭の国際映画部門で、最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀女優賞の三冠を受賞している。

INFORMATION

映画『レディ加賀』(2月9日公開)
https://ladykaga-movie.com/

「石川県に思いを寄せてほしい」配給収入の一部を寄付…“加賀温泉の若女将”を撮った映画監督の想い

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