――『aftersun/アフターサン』のシャーロット・ウェルズ監督や『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督が本作のファンを公言しているように、『美しき仕事』は、今の若い監督たちに大きな影響を与えた作品としても知られています。以前私がインタビューをした『インスペクション ここで生きる』のエレガンス・ブラットン監督もそのひとりで、「男性という生き物を官能的で美しい存在として描くことを、クレール・ドゥニによって許可されたような気がする」と熱く語っていました。こうした下の世代の監督たちからの熱烈な声を、どのように受け止めていらっしゃいますか?
クレール・ドゥニ 生きているといろんな偶然の出会いがある、としか言いようがないですね。私自身も、小津安二郎監督の『晩春』を見たとき、これは私の母と祖父の話だと感じました。祖父は、妻を若いうちに亡くしひとりで私の母を育てた人でしたから、小津の映画と自分の家族とを重ね合わせてしまったんです。そして私はこの映画から受けたインスピレーションをもとに、『35杯のラムショット』(注:パリ郊外で暮らすアフリカ系の父娘を主人公にした2009年製作の映画)という映画をつくりました。いつどこで自分に深い感銘を与えてくれるものと出会うのかは、誰にもわからないのです。
同性愛的な欲望を掻き立てる側面があるのは確かです
――今、若い世代の人たちが強くこの映画に惹かれているのは、本作が男性たちの同性愛的な欲望を描いた、いわゆるクィア映画であるからという側面も大きいのではないでしょうか。
クレール・ドゥニ でもそれは当然のことですよね。軍隊、特に外国人部隊という場に、同性愛的な欲望を掻き立てる側面があるのは確かですから。実際に、外国人部隊のコスチュームを専門とするゲイクラブも存在しているし、海兵隊やバイカー集団をはじめ、男たちしかいない集団のなかで同性間に性的な欲望が生まれるのは、ごく自然なことだと思います。