フランスの巨匠クレール・ドゥニが1999年に監督した『美しき仕事』が、四半世紀の時を経て日本で初めて公開される。本作は、メルヴィルの小説『ビリー・バッド』を発想源に、東アフリカのジブチに駐留する仏外国人部隊の兵士たちの愛と欲望を描いた物語。かつてこの部隊で上級曹長だったガルー(ドニ・ラヴァン)は、懐かしき日々を回想し自分が引き起こしたある事件について語り始める。事件の契機となったのは、当時の上官フォレスティエ(ミシェル・シュボール)への憧れと、美しい新兵サンタン(グレゴワール・コラン)に抱いた嫉妬心だった。

 フランスの植民地下にあったアフリカで幼少期を過ごしたクレール・ドゥニ監督。どこまでも続く砂漠や塩湖、火山に囲まれたジブチを舞台に、男たちの美しい肉体を映し、彼らの間でうごめくさまざまな感情を描いた『美しき仕事』は、クィア映画として近年再評価の熱が高まっており、2022年に映画雑誌『Sight&Sound』で「史上最高の映画」の第7位に選ばれた。横浜フランス映画祭での上映のため3月に来日したクレール・ドゥニ監督に、撮影時の思い出について、お話をうかがった。

© LA SEPT ARTE – TANAIS COM – SM FILMS – 1998

その動きは実に優雅で、まるでダンスのように見えた

――クレール・ドゥニ監督の映画では、いつも人々の体が美しく撮られていることに驚きます。特に今回4Kレストア版が公開される『美しき仕事』では、ジブチで軍事訓練をする兵士たちの体が、まるでダンスのように優雅に映されています。どうすれば、このように人々の肉体の動きを映すことができるのでしょうか?

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クレール・ドゥニ 実際にジブチに行き、外国人部隊の軍事訓練を遠くから眺めたとき、その動きは実に優雅でまるでダンスのように見えたのです。当時はイラクやイエメンでの戦争が起こる前で、ジブチには何の危険もなく部隊の敵もいなかった。そこで彼らの訓練を見るのは、不思議な感覚がありました。

――劇中では、部隊の訓練中の姿がたくさん映されますが、これらは実際の軍事訓練の様子をもとにしているのでしょうか? それとも映画で独自の振り付けをされたんでしょうか?