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「大好きな映画とか漫画とか小説から受けた傷で、傷だらけなんですよ」中学生7人の物語が『クレしん』監督の心を動かしたワケ

原恵一(映画監督)――クローズアップ

 史上最多得票数で本屋大賞を受賞し、170万部を売り上げた辻村深月さんの小説『かがみの孤城』。この劇場アニメ化を手掛けるのが、原恵一監督だ。

 原さんは「クレヨンしんちゃん」のアニメシリーズおよび劇場版を長く手掛け、『河童のクゥと夏休み』をはじめ、児童文学を映像化した作品でも高い評価を受けてきた。本作はオファーに応える形で監督を引き受けたという。

原恵一監督

「12年前、森絵都さんの小説『カラフル』を原作に中学生たちを描いた映画を作ったんですね。だから今回、『かがみの孤城』でまた中学生を主人公にした映画を作ることに、正直言って躊躇があったんです。それで長年の付き合いがあるプロダクション・アイジーの石川(光久)さんに相談したら、彼もすぐに読んでくれて、『原さん、これは絶対にやったほうがいいよ』と。それが決め手になりました」

『かがみの孤城』は、中学1年生の女の子・こころ(声・當真あみ)が、部屋の鏡を通じて不思議な城に迷い込み、狼の仮面を被った少女・オオカミさまと、リオン(声・北村匠海)ら6人の中学生に出会うというストーリー。こころたちは、オオカミさまから城に隠された「願いをひとつだけ叶える鍵」を探すよう促される。

「原作を読んで、ストーリーの流れを変えて無理に自分の映画にする必要はないだろうと感じました。ただ、7人全員の背景をきちんと描くのは時間の制限もあって難しい。こころを中心にした7人の物語、ということでやるしかないだろうと」

 学校での居場所をなくし家に閉じこもっていたこころ。物語が進むにつれて、城に集められたほかの6人の中学生たちと共通点があることが分かっていく。原作小説と同じく、繊細な心理描写とミステリー的な仕掛けを、子どもから大人まで年代問わず楽しめる映画になっている。

 一方で、登場人物たちの年齢で向き合うには過酷な現実も描かれるが、原さんは「子どもにショックを与えるような物語は悪」という風潮には異を唱えたいという。

「ある意味、昔の作品のほうが残酷なんですよ。主人公が最後に死ぬっていうのはすごく多かったし、それが物凄く印象に残ったりした。僕の心なんて、大好きな映画とか漫画とか小説から受けた傷で、傷だらけなんですよ。でも、それで今、こういう仕事ができていると思うんです。子どものときの自分が喜ぶものを作れたらいいなあっていう気持ちは強いですね」

 これまで、小説や漫画の映画化を手掛けてきた原さん。今後は、オリジナル作品の構想も?

「コロナ禍でしばらく家にいる時間がとれたので、頭のなかにあった物語をアウトプットしようと思って、映画の脚本を3本くらい書きました。まだ何も動き出していないから本当は言えるような段階じゃないけど、書いてもいいですよ、既成事実にしたいから(笑)。『かがみの孤城』が大ヒットすれば、道ができてくるかもしれません」

はらけいいち/1959年生まれ、群馬県出身。主な監督作に『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』『河童のクゥと夏休み』『はじまりのみち』(実写作品)『バースデー・ワンダーランド』など。2015年に公開された『百日紅~Miss HOKUSAI~』はアヌシー国際アニメーション映画祭で長編部門審査員賞を受賞した。

INFORMATION

映画『かがみの孤城』
12月23日公開
https://movies.shochiku.co.jp/kagaminokojo/

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