「学生時代、自分はまわりのアニメファンとは少し毛色が違っていて、深夜アニメのような作品より、『ドラえもん』や『ドラゴンボール』のような、日本中の子供たちが見ているような作品が好きでした。自分もそういう、子供たちに夢を与えられる作品をつくりたいと思ってこの世界に入りました。それとともに、いつか劇場作品をつくりたいという思いもあり、今回の企画が所属している会社に持ち込まれたときには、ぜひ自分にやらせてくださいと手を上げました」

 と、アニメ映画『ぼくらの7日間戦争』(12月13日全国公開)の監督を務めた村野佑太さんは語る。宗田理さんによる同名原作は、1985年に刊行された。厳しい管理教育を押し付ける大人たちに反抗して中学生たちが廃工場に立てこもり、悪戯をしかける痛快さが受けて大ヒット。88年には宮沢りえの出演による実写映画も話題になった。『ぼくら』シリーズは累計2000万部を超え、いまも新しい読者が生まれている。

村野佑太監督

 そして実写映画版から30年、今度はアニメ映画として帰ってきた。

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「実際に制作にかかってみると、当時と現在の違いに気が付かされました。

 高校生たちへのヒヤリングで、大人をどう思うか聞いてみたら、『とくにどうも思ってない。どちらかというと、かわいそうな存在だと思う』と(笑)。いまの子供たちにとって、そもそも大人は反抗の対象となるような強い存在ではないんですね。

 一方で30年前、『ぼくら』シリーズに感情移入していた子供たちは、大人となり、その多くは社会のなかでとりつくろって苦労して世の中を生きています。

 いま、彼らにこの映画を通して『大人になった君は敵だよ』と言ってしまうのは酷ですよね。今回の映画を作るにあたっては、子供と大人の関係のバランスを取ることに気を付けました」

スマホのなかで簡単に自分たちの世界をつくれるいまの子供たち

 舞台を現代に移したことで、子供たちを取り巻く環境も変わった。子供たちはSNSを使いこなし、不法就労の外国人の問題にも直面する。

「自分たちの世代と違って、ネットはいまの子供たちにとって生まれた時からある、身近な存在です。かつての子供たちは、大人たちに反抗しなければ『解放区』をつくれませんでしたが、いまの子供たちは、スマホのなかで簡単に自分たちの世界をつくることができます。だけどそれで『解放』されたのかといえば、その場所を守るためにかつてとは違う心労を積み重ねているようにもみえます。やっぱりその部分を描かないと、現代の『ぼくら』シリーズの話にならないだろう、と思っていました。

 今回主人公たちを高校生に設定しています。彼らは大人の都合で大人といわれたり、子供といわれたりしますが、映画のなかで彼らは様々な価値観を提示され、自分自身で大人なのか子供なのかを選択します。そしてあえてこの場だけは子供であることを選ぶ――それってすごく気持ちいいことではと思いますね」

むらのゆうた/1984年、静岡県生まれ。大阪芸大卒業後、アニメ制作会社の亜細亜堂に入社。主な監督作品は『ドリフェス!』『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』など。

INFORMATION

映画『ぼくらの7日間戦争』
http://7dayswar.jp/