日本映画が量産されていた時代のジャンル映画やシリーズ映画では、似通った物語展開や配役の作品が多かった。
そのため、同じ役者が似た感じの役柄を演じることも少なくなかった。そうなると、観る側としては特定の役者が出てきただけで「おそらくこの役者はこの後こういう芝居をして、物語はこういう展開になっていくだろう」という目星を付けられるようになる。
今回取り上げる深作欣二監督によるヤクザ映画『博徒外人部隊』も、最初に観た時はそんな一本として接した。
抗争する相手の親分を殺して収監されたヤクザ・郡司(鶴田浩二)が十年ぶりに出所して地元の横浜に戻ると、自らの組は潰されており、東京の大組織が牛耳っていた。
居場所のない郡司は新たな縄張りを求めて、かつての仲間たちと共に、日本返還を翌年に控えた沖縄へと向かう。
この郡司に付き従う面々は、かつてのライバル役の安藤昇と若いチンピラ役の渡瀬恒彦。それに初老のヤクザ役で由利徹、郡司の腹心役で小池朝雄と室田日出男が加わっている。
この配役だけである程度の展開の予想はつく。安藤とは当初は対立しながら友情を育み、渡瀬は鶴田に忠誠を尽くす。そして、由利がところどころで笑いをとり、小池と室田はどこか重要なポイントで裏切りをかましてくる……。
東映ヤクザ映画では、彼らは大体がそんな役回りになっているからだ。
ところが本作は違った。
まず、由利が笑いをとらない。寡黙な芝居を続けた末、抗争中に渡瀬を庇ってダイナマイトの餌食になり、家族の心配をしながら息を引き取るという、壮絶な最期を遂げる。
さらに驚かされるのは、小池と室田だ。多くのヤクザ映画で裏切り上等の利己的な役を演じてきた二人のことだ。本作でもいつか必ず……と思いながら観ているのだが、一向にその時が訪れないどころか、予兆すら感じられない。どんな苦難にあってもひたすら鶴田を支え続けているのだ。
それでも東京の大組織が沖縄に乗り込んできた際に組は解散、二人は鶴田の下を離れる。そして、鶴田が最後の決戦に向かおうとする時、小池と室田が待ち構えていた。ついに裏切りか――と思いきや、なんとこの二人が鶴田と共に死地へと赴くのだ。この時の、小池の少年のような爽やかで曇りない笑顔、室田のストイックな眼差し――他のヤクザ映画では決して観られないピュアな表情が、決戦の特別感を盛り上げていく。
お馴染の役者たちの定番を外したことで、物語の状況がいかに切迫したものかが生々しく伝わってきた。深作の、巧妙な配役術である。