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阿川 へぇ~。何歳のときですか?

中尾 20代後半ですね。宇野さんは、後に絵の個展を開いたときも、僕がいないときに来てくれたりして、実は大事に育てたいという思いがあったことをだいぶあとになって知りました。

阿川 殺さなくてよかったね(笑)。そのあと中尾さんは、映画やドラマを中心に仕事をされるようになって……。

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中尾 はい。でもちょうど30代が役者として一番難しいんですね。

阿川 以前、三浦友和さんにインタビューしたときも同じことをおっしゃってました。30代は、お父さんには若すぎるけど、青年というのには歳がいきすぎてるから、パタッと仕事が少なくなったって。

中尾 そうなんですよ。津川雅彦に相談したら「中尾ちゃんな、30過ぎてもったら一生もつぜ」と言ってくれたんです。だいぶ経ってから、「そう言ったよな?」と聞いたら「覚えてない」って。いい加減なやつですよ(笑)。

©文藝春秋

阿川 津川さんと中尾さんってそんなに歳離れてましたっけ?

中尾 向こうが3つ上なだけなのに、そういう答えだったんだよね(笑)。僕の場合ありがたかったのが、ちょうどその時期、2時間ドラマがたくさん作られて、そこで役をもらえたこと。

悪役を演じることの“気持ちよさ”

阿川 そうだ! 中尾さんと言えばみごとな悪役でしたね。

中尾 それしかないもん。結婚したあと、志乃のお父さん(落語家の10代目・金原亭馬生)に「あれ、今日は襲ってないね」なんて言われて(笑)。でも、悪役って大変なんですよ。最後に長い台詞を喋らなきゃいけない。しかも崖の上で。

阿川 あれ、どうしていつも崖なんですかね(笑)。

中尾 観ている側はドラマチックに感じるかもしれないけど、こちらにとってはドラマチックでもなんでもない。

阿川 風が強いだけ?(笑) 犯人以外だと、企業の悪いボス役とかも。

中尾 やりましたね。現実では自分が悪いことは出来ないから、悪役って気持ちいい部分もあるんですよ。僕は悪役を演じるときは、自分じゃなく、相手役のほうが悪者だろうと思って芝居していました。

阿川 それはどうして?