普通でいることを心がけている
中尾 現実問題、悪役だって、「自分が悪いことしてますよ」って、生きてるわけじゃないでしょう。僕自身、出てきただけで悪って顔してもしょうがないだろうと思ってるんです。
阿川 じゃ、あんまり悪そうな顔はしないで?
中尾 いや、顔というより、普通でいることを心がけています。普通がいちばん怖いだろうなと。僕はホンを読んだときに、色彩で役柄をイメージする癖があるんですね。たとえば主役が赤だとしたら、私は黒とか。で、黒って誰でもできるんですよ。僕は、その黒を引っ掻いてみると、下に黄色やブルーが出てくる役作りをするんです。人物像が二重三重になってるほうが絶対に魅力的じゃないですか。
阿川 たしかに!
中尾 そのためにも、台本を1回読んだら、ストーリーは分かるので、鞄に入れちゃう。そこから撮影までに色んな人に会ったり、食事しているうちに、鞄の中のホンが、ふつふつとしてくるんですね。
阿川 熟成されるって意味ですか?
中尾 近いね。ワインと一緒。ドラマと関係ない人と会っても、「彼のフォークの置き方が」とか、色んな情報がインプットされて、それを経て再びホンを読むと、まったく違う人物像が見えてくる場合があります。
「役者なんて面白くもなんともないですから(笑)」
阿川 お話を伺ってると、画家としての目や思考があるからこそ、役者稼業に飽きることなくやってらっしゃるのかなと……。
中尾 それはあると思います。役者なんて面白くもなんともないですから(笑)。
阿川 ハハハ、一刀両断(笑)。
中尾 だって、言われたことをやっていきゃいいわけでしょう。
阿川 でも、そこに達成感とかは?
中尾 あったって、作品は人のものですからね。僕はキャスティングされた時点で、仕事は終わりという感覚があります。それはコメンテーターの仕事も同じで、そこに僕が呼ばれているということが役目であって、何を言うかはそこまで大きな要素ではないというか。それこそ、阿川さんの出演されてる『TVタックル』に何度か呼ばれたことがありますが、あの番組だって、たけちゃん(ビートたけし)がいて、大竹(まこと)がいることが大事なわけでしょ?
阿川 あの番組は、何か発言することで世直しをしようなんて、レギュラー陣は考えてないです。
中尾 それをやったら、昔の新劇ですよ(笑)。
阿川 思想先行……?(笑)
“終活”という言葉を知らなかった
中尾 でも、あの番組はみんな楽しそうにしてるからいいよね。ちなみに、大竹は志乃と同期なんですよ。
阿川 ああ、そうでしたね。その志乃さんとの終活が話題になっていることについてはいかがですか?
中尾 最初、“終活”という言葉を知らなかったんですよ。木更津にあったアトリエを片づけたり、墓を建てたときに取材されて、その話をしたら、「それ、終活ですね」と言われたんです。そこから「あ、そうなんだ」と思って、さらに進めたようなもんですね。