一方、児童・生徒の側は「今朝の気分を伝えることについてどう思いますか」という問いに対し、小学生は「とてもよい」が43.5%、「まあまあよい」が54.3%と肯定的な意見が圧倒的で、「あまりよくない」は2.2%だった。中学生になると「よい」の割合が下がり、「とてもよい」が37.8%、「まあまあよい」が48.0%だった。「あまりよくない」は11.2%、「全くよくない」も2.0%と、内面の成長を反映した複雑さが垣間見える。「言いづらいことを伝えやすい」「気分を知ってもらえる」「先生がそれなりの対応をしてくれる」という声があった半面、 「人に話したくない事情もある」と答えた生徒もいた。
県教育委員会の担当者は「児童・生徒に対しては教員の見取りが基本ですが、こうしたデータで補完したいと考えています。他のどんな教育データと組み合わせたら見えてくるものがあるかも研究しています。ただし、センシティブな個人情報なので、取り扱いには細心の注意をしており、データの蓄積も卒業までと決めています。進学時は引き継ぎません。研究会で指摘された『答えたくない子』については、回答方法を検討していきたいと思います。毎朝『よくない』と入力し続けるのも、その子にとっては負担です。一方では、『口より伝えやすい』という子もいます。『相談したい』というボタンもあり、押された時にはすぐに対応できるほか、気分が急に落ちた時にトラブルの発見につながる面もあります。今後は保護者を含めてより詳しく内容を説明するなど、これまでに増して注意しながら実証実験を続けます」と話していた。
研究会では、フェイク(偽・誤)情報や選挙への影響も話し合われた。
フェイク情報に行政がどう関与するのか。「自治体側から正確な情報を発信することが非常に重要」と発言する委員もいたが、憲法が保障する「表現の自由」を行政が制限することはできない。「慎重さ」を求める委員もいた。
フェイク情報で選挙が歪められたアメリカの大統領選挙
ネット社会の進展で「信者」が増えている陰謀論は、SNSのやり取りで「信じたい情報」ばかり入手することなどから、のめり込んでいく構造があるとされている。
そうしたことに対して自治体から発信しても、「信じてくれるのかという問題がある」と心配する委員もいた。
SNSは投稿を参照した数によって収益が上がるシステムを導入した事業者もいて、これがアクセス数稼ぎのためのフェイク情報の温床になっていると言われている。
これらの対策として、「アテンション(人々の関心や注目)を得ればお金になるという構造も自治体から伝えるべき」「偽情報に対しては、ゲームなどで予防接種的に免疫、耐性を獲得しておこうという考え方が広がっている」「『情報的健康』という概念が提唱されている。情報を偏って食べたり、情報の信頼性を確かめることなく食べたりしてしまうと、次第に自分の認知がゆがんでしまう。情報をバランスよく食べ、どんな情報か確かめてから食べようという啓発の仕方もある」といった方策が提案された。