政府のGIGAスクール構想では、全国の児童・生徒に1人1台ずつタブレット端末が導入された。これを利用し、子供達に主に朝の気分や体調を「よい」「ややよい」「いつもどおり」「ややよくない」「よくない」といった分類で入力してもらい、教員が把握する取り組みだ。
児童・生徒の気持ちが可視化され、蓄積したデータを追いかけると不調の兆しが見つけられることから、不登校やいじめの早期発見につながるという。
大阪市や奈良県、高知県などが先行導入し、鳥取県は2022年度にモデル3校で導入。小中高校など14校で実証実験を続けている。
研究会では「子供を守るという意味では有効な場合がある」といった効果を期待する声もあったが、先行自治体への調査でも課題として浮かんでいなかった留意点が数多く指摘された。
「憲法第19条で定められた『思想及び良心の自由』との関係で非常にセンシティブなデータ」「内心に踏み込む面がある」「一つ一つの情報は些細なものかもしれないが、トータルで様々な情報が集まると、内心を相当にプロファイリング(性格や好みなどの分析)してしまうことになる」といった問題だ。
「学校で行われることになれば、回答しなければならないという従順な市民を育てることにつながる。信頼できる教師には気持ちを打ち明けてほしいが、打ち明けなくてもよい自由との関係で懸念がある」「学校という環境では同意せざるを得ない」という声もあった。
「嫌だと思っている子が存在するのであれば、非常に重大なことではないか。答えなくても済むような仕組みにしなければならないのではないか」「センシティブな心境にある子は、こういったことを聞かれるだけで落ち込んでしまうこともある」といった意見も表明された。
ただし、「気持ちが伝えやすいという子も存在するはず。(この技術を)直ちに否定することは問題」「良い悪いで論じるのは困難」「内心に踏む込む面があるといった意見がある一方で、SOSを発する子を可能な限り早期にキャッチしなければならないという要請もある。バランスが非常に難しい領域であることも踏まえたうえで検討する必要がある」といった有効性に着目した意見も出された。
教育現場から返ってきた“反応”
学校の現場での反応はどうなのか。県教委が2022年度のモデル3校で教員にアンケートをしたところ、「児童生徒の状況を把握することに役立ちますか」という問いには、64.7%が「そう思う」、35.3%が「まあまあそう思う」と答えた。「些細なことでも伝えてくる」「意外と本音を書いている」「日々の刻々とした気持ちの変化が見て取れる」「教職員全体で共有でき、管理職が出張先からでも確認できる」という記述もあった。