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「そうしたら、夜九時前に電話がかかってきて『奥さん、今すぐ来て下さい』って言われて、病院に駆けつけたんです」

「ご臨終です」「は?」

 病室には院長の長谷と看護師二名、吉村義雄と田中米太郎、ミツ・ヒライの姿もある。

 長谷は神妙な面持ちで脈拍を取っている。全員が押し黙っていた。何が何だかわからない。帰宅している間に何が起きたのか。

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 程なくして、長谷が顔を上げて言った。

「ご臨終です」

「は?」

 突然、田中米太郎が泣き出した。敬子はすぐに理解出来なかった。

 眼前には、静かに横たわる夫の姿がある。眠っているようにしか見えない。

 ここで、敬子の記憶は途絶えている。

 気を失ったのだ。

 そして、深い眠りに落ちたのである。