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 イベントはワン監督・ポン監督のいる台湾と、会場をオンラインで結んで行われた。

ポン監督(左)とワン監督 ©今日影像藝術

 まず工藤監督が、「今年2月のベルリン映画祭の『タイワン・ナイト』の会場で2人に紹介され、意気投合したんです」と、この日のゲストとなったきっかけを紹介。

 また工藤監督は、森田芳光、行定勲、石井岳龍といった名だたる監督の下で助監督をつとめてきたが、

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「その間に台湾映画の助監督を務めたこともあって、そこから台湾映画に興味をもってたくさん観始め、勉強し始めました。『春行』は台湾映画らしい、日本の映画が忘れてしまった風景や音の録り方などがあって、素晴らしい映画だと思います」

工藤将亮監督(手前) ©文藝春秋

台湾で実際に起こっているニュースを参考にした

 工藤監督が、作品ができるまでの経緯を尋ねると、ポン監督が答えた。

「私は芸術を勉強していたアーティストで、彼女(ワン監督)はジャーナリズムを学んでいました。背景は違いましたが、お互い周囲にアートフィルムを観る人があまりいなかったので、出会ってすぐに仲良くなりました。今回は彼女から映画を一緒に作らないかと誘われたんです」

 ワン監督が引き取って、

「私は大学でジャーナリズムを学んだ後、カリフォルニアの大学で映画の勉強をしました。卒業後はアートフィルムを作りたいと思い、アーティストであるポン監督と再会し、一緒に映画を撮ることを提案したのです」

『春行』の台湾ポスター ©今日影像藝術

 亡くなった愛妻を最初は氷漬けにし、次は大量の塩に埋めてまでも自宅に置き続けようとする男の物語は、台湾で実際に起こっているニュースを参考にした。

 家族が亡くなっても、経済的な理由あるいは精神的な理由から、遺体をそのまま家に置き続けることが実際にあるのだという。