『君の名前で僕を呼んで』がアカデミー賞ノミネートを果たし、続く『サスペリア』『ボーンズ アンド オール』で物議を醸したルカ・グァダニーノ監督の新作『チャレンジャーズ』は、またしても問題作だ。

 女子テニスの元スター選手(ゼンデイヤ)と、ふたりの男子テニスプレイヤー(ジョシュ・オコナー、マイク・フェイスト)による三角関係のドラマは、なぜ観る人を唖然とさせるのか。

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とにかく尋常でない、あっけにとられる結末 

 いまのはなんだったのか?

 いったいなにが起きたのだろう?

18歳の3人はホテルの一室で…左からアート(マイク・フェイスト)、タシ(ゼンデイヤ)、パトリック(ジョシュ・オコナー) ©2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.©2024 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. All Rights Reserved.

『チャレンジャーズ』が最後に描きだす光景は、予期や想像の及ばぬところへ観る人を放りだす。

 どんでん返しのような、展開を思いきりひっくり返すものではないが、とにかく尋常でない、あっけにとられる結末。

 なんだ、これは?

 ただまあ、落ち着いて考えてみれば、あっけにとられるのは結末だけではない。

『チャレンジャーズ』は劇薬のような映画だ。

全米オープンテニス出場を賭けた元親友同士の決勝戦

 ニューヨークのニューロシェルで行われるテニストーナメント“チャレンジャーマッチ”の決勝。

 勝てば全米オープンへの出場権を手にできる、この大事な試合で対戦することになったのは、かつて親友同士だったふたりだ。

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 ひとりは四大大会を次々に制し、グランドスラムの達成まであとわずかとなったところで、スランプに陥ってしまったアート・ドナルドソン。

 一方のパトリック・ズワイグはホテル代を捻出できないほど困窮する、ほとんど無名のプレイヤーだが、無遠慮な自信に満ちあふれている。

18歳の青年2人を魅了したゼンデイヤ扮するタシ

 アートとパトリックは子どものころからの知り合いで、同じテニスアカデミーでしのぎを削ったルームメイトだった。だが大学進学か、プロ転向かで揺れていた18歳のころ、ふたりはタシ・ダンカンと出会う。