中野 自分に似合って、好きかどうか。その2つがポイントです。わりとそういうキャラには出会えています。たとえば「耳なし芳一」のときは弾けないのに「似合いそうだから」という理由で琵琶をいただいて、コスプレに挑戦しました。
「名前が広まる」ことに興味はない
――コスプレしようというモチベーションは、どこから出てくるのでしょうか?
中野 「このキャラやりたい!」というモチベーションが自然に湧いてくることもありますが、僕は自分のことがあまり好きではない。なので、ほかの人に変身したいという思いが強いのではないでしょうか。
昨年のコミケで僕のXのポストがバズったことで、「空也上人の中野さん」と覚えてもらえることも増えました。でも、僕はコスプレ写真をイベントで撮ってもらっても、あまり名前を伝えないんですよね。ただ空也上人のコスプレをしている“誰か”とさえ認識してもらえればいい。名前を知ってもらえるかどうかにはあまり興味がないんです。
――注目してもらう手段としてコスプレをする方もいらっしゃいますが、中野さんはそのタイプではないと。
中野 僕はあまりメンタルが健康ではないので、コスプレをするという先の目標があったほうが元気に生きられる。そのためにコスプレを続けているところがあります。
――人生を健やかに生きる工夫でもあるわけですね。目標を先に定めておいてそのために生きられるというのは同人作家さんやコスプレイヤーさんからたまに聞きます。
中野 実は鬱で通院もしているんですけど、鬱だとお風呂に入れなかったり、ご飯が食べられなかったりする。でも、3ヶ月後にイベントでコスプレの予定があると、それに合わせて健康を保とうとする意識が働きます。だから、僕にとってコスプレは「健康に良い」ことなんです。
――コスプレ健康法。
中野 薬の関係で一時期、太っていたこともありました。もう少し自分を好きなタイプの人間だったら、太ったことに対してネガティブな気持ちが湧いたかもしれませんが、僕にはなかった。なんならハゲで、デブで、メガネであることが面白いとすら思っていた。それでしばらく太ったまま活動していたら、それが舞台『ゴールデンアックス』の出演につながったこともありました。それが写真のバド兄弟です。
――その時々で今の自分とぴったりな役と縁があるのはすごいですね。