児童虐待、DV、ハラスメントなどが起こる背景には、加害者の過去の「トラウマ」が影響しているのではないか――。そう語るのはノンフィクションライターの旦木瑞穂さんだ。
2023年12月に刊行した『毒母は連鎖する~子どもを「所有物扱い」する母親たち~』(光文社新書)などで、家庭内で起こる“タブー”を調べていくと気が付いたことがあったという。親から負の影響を受けて育ち、自らも「毒親」となってしまう「トラウマの連鎖」こそが、現代を生きる人々の「生きづらさ」の大きな要因のひとつではないか。
今回は、大学進学後に依存症になり、依存症マンガを描いたことがきっかけでマンガ家として活動し始めた三森みささん(31)に、「トラウマの連鎖」について聞いた。宗教3世として生まれ、思春期に両親の離婚を経験、ついに精神のバランスを大きく崩してしまった三森さんのその後は……。(全3回の2回目/続きを読む)
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2ヶ月ぶりに会った母親にトドメを刺される
夏休みの宿題ができないだけでなく、学校の成績が落ちていくなどのゲームによる悪影響が出始めると、三森さんのストレスは増すばかりだった。増えたストレスから目を背けるために、またゲームをしてしまう……という悪循環に陥っていた。
「『今日こそゲームをやめるんだ!』と思って削除しようとするんですけれど、『やっぱり最後にもう1回、お別れとしてちょっとプレイしておくか!』みたいな謎の発想になって、そこからまた8時間ゲームしてしまう。ゲームで得られる快楽が染みついて元に戻れなくなっていました」
現実逃避のために始めたゲームでも苦しみ始めた三森さんは、「もう奉仕でも何でもするから助けてください!」と宗教にすがるが、神頼みは解決にならなかった。
そして高校生になったある日、原因不明のめまい、頭痛、吐き気、倦怠感が襲い、嘔吐してしまう。
歩くこともままならず、熱もあったため、「病院に連れてってほしい」と懇願したが、「嫌だよ金かかるし」と父親は拒否。
途方に暮れた三森さんは、別居中の母親に助けを求める。
肩と首に冷えを感じるため、「肩こりが原因じゃないかと思う」と言うと、母親はマッサージに連れて行ってくれた。
約2ヶ月ぶりに会った母親は、三森さんの顔を見るなり堰を切ったように捲し立てた。
「みさちゃん聞いて! ようやくパパと離婚できたんだ~! 本当に長かったわ~! 私ね、本当はパパと結婚なんかしたくなかったのよ~! やっぱ宗教やってるしさ、私の時はね、『女は25歳過ぎたら売れ残りのクリスマスケーキ』とか言われる時代だったから嫌々結婚したのよ~!」