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米軍が絶望してもおかしくない

 それにもかかわらず、7年が経過した今になっても、何ら事態は改善しておらず、今回の事件に至ったということになる。深刻なのは、平和安全法制以後、自衛隊は在日米軍の装備を防衛することを事実上約束していた点だ。

 つまり米側に対し、日本側は平和安全法制でグレーゾーン事態でも米軍を守れると主張している。しかし、現実には、ドローンによる攻撃を阻止どころか探知できていない。

 これは米側をして、金城湯池であった在日米軍基地の安全性に深刻な懸念を呼び起こしかねない。

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©AFLO

 米中関係が危機的になった場合、もしくは中国が台湾侵攻を決意した場合、在日米軍の戦力を機能発揮させない為に、中国側は市販の民生用小型ドローンや部品から自作したドローン――困ったことに知識があれば容易にドローンは製作できる――で攻撃を仕掛けてくる公算が高い。それにもかかわらず、7年前から問題視していた事態を日本側が放置し、なんら改善もされていないという現状が全世界に示されたのだ。米側が日本のドローン対処能力に失望どころか、絶望してもおかしくはない。

 緊張が高まった時点で、米側は適当な口実を設けて、日本に展開する空母打撃群や航空戦力を洋上なりグアムへと後退させる可能性もある。そうなれば日米間の不信が高まるだけでなく、米軍の戦力が後退することで抑止力も低下しかねない。

自滅した戦略コミュニケーション

 最後が情報戦の危機だ。

 量産型カスタム師の分析によれば、今回の犯行は「ウクライナ軍と同様にDJIのドローンをハックして同社のGeoフェンス(飛行制限区域で飛行を管理する機能)を突破してはいるが、条件が揃えばそこまで難しいわけでもなく、飛行自体もずば抜けて上手いわけではない。さらに動画編集にしても情報戦という観点のテクニカルさは感じられない。さらに自ら複数犯であるかのような写真をXに投稿したりと、目立ちたいという欲求が見え隠れするイタズラ目的にも見えなくもない」ということで、1人もしくは2人以上の複数人による愉快犯の可能性が高い。つまり中国政府が背後にあるとは考えにくい。

 今に至るも自衛隊施設への組織的と目されるドローン侵入は相次いでいるにもかかわらず、それらの映像が出てこないことからも明白だろう。