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 中国政府側からすれば、自衛隊側が面子を理由にドローン侵入を公表しないのをいいことに不断の侵入を継続し、いざ有事直前に奇襲攻撃をしかけたいというのが人情だろう。

 それが今回は開けっぴろげで行われた。さらに、海幕やフジテレビや朝日新聞がフェイク説を匂わせる度に、いずもドローン模擬攻撃動画を撮影したと思しき人物は、米艦艇などの新しい動画を次々と公開した。

 これは中国からすれば日本の警戒態勢と軍改革を加速させかねない悪夢だ。

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 実際、台湾は金門島守備隊への中国市民のイタズラ目的での侵入を契機に、ドローン前提軍へと脱皮している。中国側は日本の同様の対応を恐れているとみるべきだろう。しかし、防衛省は今回の動画に際して、フェイクの可能性を強調し、1カ月間右往左往した挙句、自爆したようなかっこう。これではデジタル民生技術が前提となった情報戦に対応していけるか疑問だ。

ドローン危機にどのように立ち向かえばいいのか

 このように今回のいずもドローン模擬攻撃動画によって、3つの深刻な危機が起きていることが分かった。それではこの危機を如何にすれば克服できるのだろうか。

 ドローンの迎撃態勢を万全とし、公開での実働演習を繰り返し、実際に侵入を探知し、情け容赦なく叩き落すことしかない。これによって米国の信頼も回復し、抑止力も発揮され、情報戦でも逆転できるのである。

 では、そうした体制を整えるためにはどうすればいいのか。

 まず、ドローンによって、低空域と浅海域、そしてそれらとサイバー空間が結びついた新しい戦闘空間「空地中間領域」が開拓されていることを認識するべきだ。新しい低空域の戦闘空間における優勢を獲得するためには、不審なドローンを捕捉・識別・撃墜するプロセスの実現が必要になる。

 捕捉については、総務省の過剰な電波規制が足かせになっている。規制によって対ドローンレーダーもドローンへの電波妨害装置も、射程が極めて低下しており、捕捉も撃墜もできない状況なのだ。そこで、筆者が提案するのは、自衛隊・警察・皇宮警察・海上保安庁といった治安機関及び原発などの重要施設を警備する民間警備会社に限り、電波法の枠外とすること。そのうえで、平時から規制外の電波を発する演習と試験を繰り返し、民間の電波障害の程度や発生しない方法を研究し、電波障害を最小に抑えつつ、安全保障を実現するバランスを見極めていかなければならない。