7月29日、オマーンのマシーラ島北東のアラビア海で日本企業が所有するタンカー「マーサー・ストリート」(リベリア船籍、運航はロンドンに拠点を置くイスラエル系企業「ゾディアック・マリタイム」)がドローン攻撃を受け、2名が亡くなる事件が起きた。ドローンがタンカー攻撃を行ったと公的に認定されたのは初めての出来事であり、さらに死者が出たのも今回が初だ。

 しかも今回の攻撃では艦橋に自爆ドローンが命中して、船長を死亡させた。つまり、意図的に命中個所を選んだ可能性が高い。これは今後のシーレーン防衛を考える上で頭の痛い問題だ。

攻撃を受けたタンカー「マーサー・ストリート」(2017年撮影) ©時事通信社

注視すべきは攻撃のやり方

 今回の攻撃について、中東エリアを管轄する米中央軍司令部はドローン攻撃と認定した。マスメディアの取材に応じた米政府関係者は、「自爆ドローンによる攻撃であり、他のドローン(おそらくは偵察用)も参加していた」と述べた。

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 米海軍のこの地域を管轄する第5艦隊も、記者会見にて爆発物の専門家が「マーサー・ストリート」に乗り込んで調査した上でドローン攻撃と認定し、自爆ドローンによる攻撃だったと事実上認めた。

 また公開された「マーサー・ストリート」の被弾した画像からも、自爆ドローンであったことが破壊の程度や独特の破孔から推察される。

Twitterより

 今回の事件を受けてイスラエル政府や英国政府は即座にイランによる攻撃と断定しているが、注視すべきは今回の攻撃のやり方だ。

 AP通信が報じたところによれば、米政府関係者は「ドローンによる攻撃は、タンカーの艦橋(ブリッジ)の上部から突入し、船長らを殺害した」と匿名を条件に話したという。つまり、自爆ドローンはタンカーのもっとも重要かつ少量の爆薬でも効果が見込める艦橋を意図的に狙った可能性が高い。

©iStock.com

 自爆ドローン自体にもカメラが付属するタイプも多いこと、偵察ドローンも現場にいたこと、イランの支援するフーシ派が民間用の衛星通信を使って自爆ドローンを誘導していた実績があることからも、現実味を帯びている。また、近くに別の船舶がいたとの情報もあり、これが誘導や操作をしていた可能性があることにも注目すべきだ。

 ドローンによるタンカー攻撃とおぼしき事例は、これまでもこの地域で幾つか散見されていた。しかし、いずれも未遂であったり、被害の程度として船体や甲板が燃えただけであった。さらに、ドローン攻撃であったと断定する証拠に乏しい「未確認情報」にすぎなかった。