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 今回の事件は非武装かつ対空レーダーもない無防備なタンカーだった。一概に比較することはできないが、今後の海上戦闘においても自爆タイプを含めたドローンの活用が飛躍的に進んでいくことは間違いない。

 特にドローンを正しく認識することが難しいのは、1年後、数年後、10年後、20年後、30年後の技術の時間軸の把握が必要でありながら、その時間軸がイノベーションによって入れ替わるということだ。極論すれば、10年後の技術が明日実現し、1年後の技術が数年遅れたりもするのだ。

日本は自爆ドローンや攻撃ドローンを未だに1機も保有していない

 日本にとっても決して無関係な話ではない。最新技術を絶えず、実際に運用することでノウハウや知見を蓄積し、新たな作戦構想や産業政策を描いていくことが求められている。日本の防衛省は、最新版の防衛白書にて、ようやくドローンが正規戦においても有効であることを認めた。しかし、自爆ドローンや攻撃ドローンを未だに1機も保有していない現状は変わらない。リースでもかまわないのでまずは調達した上で、早急に検証を行うべきだ。

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 自衛隊のガラパゴス化は疑いようのない事実である。例えば、インドネシアは攻撃用ドローンを開発し、今年初飛行の予定となっている。ハーピーの後継タイプであるハロップは、対艦用タイプが開発されているがアジア某国にすでに販売されたとの報道もされている。

 日中間で不幸にして戦争が生起した際に、緒戦で水上に遊弋する貨物船や沿岸部に紛れ込んだ工作員が自爆ドローンを放ち、護衛艦隊が半壊状態もしくは対空弾薬を射耗したところに中国艦隊が侵攻してきたのでは防衛はままならない。

 かつて、米海軍は英軍が航空攻撃によって停泊中の戦艦を撃沈及び大破せしめたタラント空襲の戦訓を軽視し、日本海軍による真珠湾攻撃で大損害を蒙った。その愚行を近い将来に今度は被害者として繰り返してはならない。

【訂正】記事内でタンカー「マーサー・ストリート」について「日本郵船グループが所有する」と記載しておりましたが、そのような事実はございませんでした。お詫びして訂正します(※2021年8月4日12:30修正)。