ハーピーはレーダー信号を逆探知して突入するタイプであり、手作りドローンは沿岸部から発進して海上の漁船から操作して突入させるタイプである。
シミュレーションの結果、通常の場合は3.82機のドローンがイージス艦への突入に成功し、対空砲であるCIWSを2基増設すると2.5機、電子妨害装置を増設した場合は2.57機、RQ8無人機から発射するデコイでは2.81機、艦艇からのデコイでは3.05機、煙幕では3.24機が突入する結果となった。CIWSの増設がもっとも効果的であり効率的だと結論付けているが、それでも完全な防御からは程遠いのが実情だ。
また、「イージス艦の戦闘システムは高速、レーダー断面の大きい目標と交戦することに特化しており、UAVのような低速、レーダー断面の小さい目標に対しては脆弱である」「レーザーは連射が効かないことから自爆UAVが複数襲来する状況では問題になる」とも指摘している。
船体のどうでもよい部位に激突したのであれば、30kg程度の炸薬の自爆ドローンは大した影響はないだろう。しかし、レーダーや発射したミサイルを誘導するイルミネーターに命中すれば、その戦闘能力は喪失してしまう。今回のように艦橋に命中すれば、CICがあるにせよ航行に支障をきたすだろう。
「物理的な破壊だけが小型ドローンのもたらす脅威ではない」
本研究が発表されたのは2012年であり、その後さまざまな対抗手段も発展した。しかし、この9年間でドローン技術はさらに飛躍的に発展している。それは先のアゼルバイジャンとアルメニアの戦争を持ち出すまでもない。
実際、今年の初夏にも米海軍は、実験船にドローン探知及び迎撃システムを搭載し、複数のドローンによる同時攻撃に対処する実験を行っている。そして、この件を軍事専門誌で報じたブレット・ティングリー氏は、「小さなドローンは艦船を沈めることはできないが、重要な箇所を攻撃することで無力化(mission kill)することができる。それが複数やってくればなおさら脅威となる」「物理的な破壊だけが小型ドローンのもたらす脅威ではない。小型ドローンをおとりとして使ったり、防空システムや通信を妨害できる。小型ドローンで集めた情報を元に、他のプラットフォームから攻撃することができる」とも指摘している。