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「章男さん、英二さんはね、厳しい人で人の好き嫌いはもの凄くはっきりしていた。だけど、人事では徹底して能力で評価していた。だから、章男さんも好き嫌いじゃなくて、英二さんを見習ってください」

 章一郎が、役員登用の約束を反故にした時、章男は何も進言してくれなかった。「父はそういう人ですよ」と笑っただけだった。だがそうした章男に対して、服部の視線は柔らかい。

服部氏が感じた“皮肉”

「章男ちゃんは、本当に複雑な人だよ。明るいか暗いかと言われれば、そりゃ暗いよ。コンプレックスは強いし。けどね、彼は僕を信用してくれて、すべてを任せてくれた。これは本当にありがたいことだったし、嬉しいことだった。僕に対しては、色々と言う人が多いんだよ。トヨタの中で僕を信用して任せてくれたのは、章男ちゃんと奥田さん。皮肉だけれど、この2人なんだよな」

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 そして、最後にこう言って、苦笑いを浮かべるのだった。

「そうなんだよ、犬と猿の2人が、僕を信用してくれた2人なんだから……、これって皮肉だよね、児玉さん」