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前検診部長らは、早期発見ができる検査は「過剰診断」の可能性があるため、必ずしも最善の検診ではないと主張して、集団全体の死亡率を下げる検査に固執した。

胃バリウムX線検査が引き起こす悲劇

こうした検診学者の考え方を強く批判したのが、実際にがんを治療する臨床医たちだ。医療技術が進んでいる時代にもかかわらず、古い検査によって検診が実施された結果、早期発見できず、命を失う患者たちを診てきた。その一人が、消化器外科医の大和田進氏(元群馬大医学部准教授・現イムス太田中央総合病院消化器・腫瘍センター長)である。

「検診学者の主張する『過剰診断』は、甲状腺がんの一部で確認された話に過ぎません。

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悪性腫瘍と診断されたがんは、全て進行して生命予後に影響します。例えば、胃がん検診は昭和時代から現在も『胃バリウムX線検査』が主流です。検診団体の大手が、このバリウム検査の見落としについて調査した結果、1センチ未満のがんは約7割、2センチ未満は約4割が見落とされていました。これに対して、内視鏡検査は胃の中を直接カメラで見るので、1センチの大きさを見落とす事は非常に少ない。

しかし、検診学者は長年にわたって『内視鏡には死亡率減少効果の論文がない』といって、胃がん検診として認めてきませんでした。その結果、バリウム検査を毎年受けても、見つかった時には進行がんだった、という悲劇が今も続いているのです」

内視鏡検査なら死亡率を減らせるのに…

さらに、臨床医らの研究によって、「胃がんの99%はピロリ菌が原因」と判明している。そのため、ピロリ菌検査と内視鏡検査を組み合わせた胃がん検診を、神奈川県横須賀市や群馬県高崎市などが採用して、多くの早期胃がんを見つけているが、死亡率減少効果が証明されていないとして、国は推奨していない。

一方、韓国では20万人を対象にした、内視鏡検査による胃がん検診の研究を行った結果、57%の死亡率減少効果を確認した。この韓国の研究を突きつけられて、国立がん研究センターの検診研究部は、2015年から胃がん検診に内視鏡を推奨したが、現在でも集団検診は圧倒的にバリウム検査が多いままだ。一体なぜなのか、その理由については後で触れたい。