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自治体には一切責任がないという姿勢に、男性は反論する。

「死にかけたんですよ。本当に苦しい思いをしました」
「ということは医療事故として裁判をお考えですか? 我々にも予測できないことでしたし、バリウムとの因果関係がハッキリしていません」

だが、外科医が男性に渡した診断書には、「バリウムで穿孔した」と明確に記載されている。それを男性が示そうとすると、検診団体の関係者は「専門家じゃないので」と言って、見ようともしない。

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健診団体は救済制度があることには触れず

自分のようなケースは他にも起きているのか、と男性が検診団体に尋ねると――。

「水分の補給が少なかったり、別の病気と重なったりして、検査から1週間後に腸内でバリウムが固まったケースが過去5年間で2回ほどありました。検査翌日に手術した例はありません」

男性は、「全国レベルでは、ありますよね?」と食い下がった。これに対して検診団体は「私どもは日本対がん協会の支部でして、(翌日に緊急手術の例は)聞いたことがありません」と回答した。

男性の場合、自治体の胃がん検診で発生した健康被害なので、厚労省の関連組織であるPMDA(医薬品医療機器総合機構)の救済対象になる可能性が高い。自治体や検診団体の関係者であれば、当然知っているはずだが、男性に対して説明しなかった。

彼らが帰った後、私が男性にPMDAの救済制度のことを伝えると、怒りをにじませてこう言った。

「なぜ、教えてくれないのでしょう。責任が問われるからでしょうか。救急車を呼ぶのが遅かったら、命を落としていたかもしれないのに、ひどいです」

バリウム検査が全面廃止されない裏事情

バリウム製剤による腸閉塞や穿孔は、決して少なくない。PMDAに年間で75例が報告されたこともある(2014年度)。その記録や論文などを確認すると、バリウム検査の翌日に緊急手術を行ったケースが大半を占めていた。検診団体の関係者が、男性に説明した1週間後に手術したケースは見当たらず、最長でも4日後だ。