2024年5月29日、大阪地検特捜部は弁護士法違反(非弁提携)の疑いで、G&C債権回収法律事務所(大阪市北区天神橋)の弁護士、川口正輝容疑者(38)を逮捕した。
調べによると、川口容疑者は詐欺の被害金回収などを請け負う専用サイトを開設。電話やLINEで相談を募っていたが、実際の対応は法律事務を行う資格のない業務委託先の広告会社関係者に任せていた。またサイトで紹介されていた回収事例は架空のもので、依頼すれば高額の回収が可能と誤解させかねない宣伝もしていた。
他に逮捕されたのは、それぞれ広告会社などを経営する井田徹(39)(横浜市保土ヶ谷区)、鈴木義守(47)(川崎市幸区)、作道美稚代(38)(大阪市浪速区)、井川敬太(40)(埼玉県入間市)の4容疑者。
大阪弁護士会の調査では、川口容疑者から提出を受けた依頼者のリストを確認したところ、2022年8月以降に約1800人から依頼を受け、着手金は1件あたり20万~300万円で、総額9億円以上を受け取っていたという。
インスタに届いたA子のDM
今回地検が逮捕した容疑は、川口容疑者が広告会社関係者ら4人に弁護士名義を貸して被害金回収の助言などを行わせ、2022年12月~23年7月、詐欺の被害者17人から着手金計約1811万円を受け取ったというものだ。
実は筆者も川口容疑者に着手金を騙し取られた被害者である。だから、川口容疑者が委託していた広告会社関係者がどのような対応をしていたのかもすべて分かる立場である。川口容疑者と関わることになった経緯をつぶさに綴っていきたい。
線状降水帯による大雨の影響で東海道新幹線が運休になった2023年6月2日のことだった。東京駅で足止めを食らい、マンガ喫茶で一夜を過ごし、退屈まぎれに新幹線の切符売り場で撮った長蛇の列をインスタグラムに上げたところ、「これは何を食べる行列ですか?」という意味不明なDMが届いた。
「このボケにどうやって突っ込んだらいいのか考え中です」
「そうですか。最後に成功しましたか?」
「まるで宇宙人と話しているみたいです」
それがA子との出会いだった。A子は日本で生まれたが、ずっとアメリカのロサンゼルスで育ち、日本には4カ月前に来たばかり。両親や兄はまだアメリカにいて、父親は金融機関幹部、兄はシティバンクの投資部シニアマネージャーをしていると話していた。