20歳の時、二つ返事で社長の打診を快諾
そして諸沢さんが接客スペシャリストになった20歳の時「次期社長になってくれないか」と打診した。その時もまた、諸沢さんは二つ返事でOKする。「はい、私でよろしければ!」と――。それは、西牧さんが「来年は君も出場するよね?」という誘いを快諾した時と同じテンションだったそうだ。
「20歳の女の子だったら『ええー、社長だなんて私には無理です!』と答えるのが普通かなと思いましたが、諸沢はやっぱり躊躇がない。そこが気持ちいいのです」
西牧さんには“頑固は最悪、素直は最高”という座右の銘がある。年齢的に頑固になりつつある西牧さんにとって、自分の教えを素直に受け止め、素直に実践する諸沢さんが、次期社長に適任だと思った。
諸沢さんもまた「もちろん、考え方が違う時もあります。でも生きている年月が断然長いし、西牧は社長としての実績も素晴らしい。だから西牧の言うことでしたら、間違いないし、私を社長にと推すのでしたら、迷うことはありません」と、断るつもりは1mmもなかったそうだ。
言うなれば、西牧さんが学長のスカイスクレイパー大学を首席で卒業したようなもの。「私は大学にも行っていません……」と諸沢さんは謙遜するが、接客の現場は人生の大学。同級生の誰よりも多く、そして深く学んできた。
こんな諸沢新社長だからこそ、同社の古参社員も誰も反対しなかったそうだ。ちなみにスカイスクレイパーの株はすべて西牧さんが保有しているので、株主からの反対に遭うこともない。
3年後に真の社長として成長できているか?
もともとスカイスクレイパーのココイチFC店はアルバイトの高校生店長も存在するくらい、パートであろうとアルバイトであろうと、スタッフ全員が店を切り盛りする文化が根付いている。22歳の社長が誕生しても不思議ではないかもしれない。
それにしても、だ。
社長になれば接客だけでなく、財務や経営に関しても明るくないといけないのでは? 諸沢さんにそれができるのか? と意地悪な質問を投げかけてみた。実際に、西牧さんはカレーづくりから経営、財務面まですべてひとりで見ていたトップダウン型の社長だったのだから。