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作詞・作曲を手がけるボーカル・ギターの大森元貴は1996年生まれの27歳。中性的な印象すら与える高音の伸びと、繊細な歌い分けが特徴的で、メロディアスな楽曲が多い。歌詞は生きづらさを認めつつも自己の存在を肯定する、前向きなものが多い。高校時代にバンドを結成して10年以上になるが、若くしてメジャーシーンに登場したこともあり、BUMP OF CHICKEN(通称バンプ)のように息の長い人気を保つバンドになるのかもしれない、とわたしは見ている。

MV「コロンブス」が暗示した植民地主義や人種差別

8歳のわが子もミセスのファンで、自宅でよく聴いている。小学校の給食の時間の放送でもよくかかっているそうだ。そこで今回のMV「コロンブス」も公開されてすぐにチェックしたのだが、一見して「これは流して大丈夫なものなのか?」と不審に思った。

ポップに仕上がりながらもビジュアル上で植民地主義や人種差別が丸出しで、初見では「黄色人種である日本人が『あえて』これをやる」という皮肉……? とも思った。しかし、それは明るく王道の楽曲を出してきたバンドイメージにそぐわない。疑問に思ううちに、非公開措置をとった旨のプレスリリースがユニバーサルジャパンから13日に出された。

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以下、「コロンブス」MVで確認した場面と、その図像からはこう読み取られても致し方ない、という歴史的事実を3つのポイント別にご紹介する。

ポイント1、トロピカルな島の猿人の家に「土足」で入るコロンブス

・バンドの3名がそれぞれコロンブス、ナポレオン、ベートーベンという白人の「偉人」のコスプレをしている。曲名でもあるコロンブスは、近年ではアメリカ大陸の「発見者」から「到達者」と言い換えられ、「奴隷商人」としての側面に光が当たるようになり、評価が大きく変わった人物だ。

・冒頭で、着ぐるみの猿人(類人猿)の家に、コロンブスたち「偉人」3名が土足で入ってくる。猿人はかつての「未開人」「土着民」や「先住民」を連想させ、この出会いは「入植」「侵略」をイメージさせる。