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 “切り裂きジャック”の最初の被害者メアリー・アン・ニコラスもその一人だ。メアリーは結婚して5人の子供をもうけたが、夫の浮気や自身のアルコール中毒が引き金となって離婚。当初は別れた夫からの仕送りで暮らしていたものの、メアリーが売春をしていることに怒った夫は仕送りを止めた。仕送りが途絶えたメアリーは救貧院で暮らしたり、事件が起きた年はメイドとして働いたりしていたが、メイドを務めていた家から3ポンド相当の衣服を盗んで逃走し、事件当時は、貧困者用の共同住宅に住んでいた。8月31日、バック・ロウという通りで発見されたメアリーの遺体は、喉が切り裂かれ、膣と腹部が刺されていた。

メアリー・アン・ニコラス ©︎AFLO

2人目の被害者は腸を引っ張り出され、両肩に掛けられ…

 2人目の被害者アニー・チャップマンもまた不幸な人生を送っていた。父親は幼少期に自殺し、アニーは若くしてアルコールに走った。結婚するも夫との関係に亀裂が入り始め、生まれた3人の子供のうち、一人は身体障害児で、一人は12歳で亡くなった。アニーは離婚するが、別れた夫が肝硬変で他界したことから、仕送りが途絶え、売春で生計を立てるようになる。

 事件当時は貧困者用の安宿に住んでいたが、宿代が払えなくなり、9月8日、宿を追い出された後殺害された。人家の裏庭で見つかったアニーの遺体は、喉が切り裂かれ、切られた腹部は丸見えで、腸は腹部から引っ張り出されて両肩に掛けられていた。子宮や膣、膀胱も切除されていた。

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 この事件後の9月28日、事件を捜査していたスコットランド・ヤードは、“切り裂きジャック”と名乗る犯人から初めて手紙を受け取ったと言われている。手紙は「親愛なるボスへ」と宛てられていた。

切断中に邪魔が入ったのか? 三人目の被害者

 3人目の被害者エリザベス・ストライドはスウェーデン生まれ。イギリスに移住後結婚したものの離婚し、別れた夫は結核で死亡した。メアリーやアニーのように、エリザベスもまた、生計を立てるために売春を始め、アルコール中毒になった。

エリザベス・ストライド ©︎AFLO

 9月29日夜、おしゃれをして出かけたエリザベスが地面に叩きつけられる様子が目撃され、その約1時間後、彼女は遺体で見つかった。エリザベスもまた喉が深くかっ切られており、首はほとんど切断に近い状態だった。しかし、前の二人の被害者ほどは身体がメチャクチャに切り裂かれていなかったことから、警察は、途中で誰かが遺体切断の邪魔に入ったのではないかとみていた。