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『光る君へ』道長像はリアルとはいえない…道長がまだ幼い長女を一条天皇に入内させた本当の理由

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藤原道長とはどんな人物だったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「自分自身とその家の繁栄のためなら手段を選ばない人物だった。自分の娘であっても彼にとっては『権力を握るためのコマ』だった」という――。

写真=共同通信社 映画『衝動』の舞台あいさつに登壇した見上愛=2021年12月、東京都豊島区 - 写真=共同通信社

安倍晴明が発した「よいもの」「お宝」の意味

一条天皇(塩野瑛久)の身勝手な行動が目に余るようになってきた。NHK大河ドラマ「光る君へ」である。第25回「決意」(6月23日放送)では、一条は寵愛する中宮定子(高畑充希)がいる「職の御曹司」に入り浸って、藤原道長(柄本佑)が進言しても政務を顧みず、そうこうするうちに、鴨川の堤が決壊して人的被害が出る始末だった。

時は長徳4年(998)。少し前の場面で、陰陽師の安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)が一条天皇に新年のあいさつをし、その際、道長に気になることを告げていた。「災いの根本を取り除かねば、なにをやっても無駄にございます」「帝をいさめ奉り、国が傾くことを防げるお方は、左大臣様しかおられませぬ」「よいものをお持ちではございませぬか。お宝をお使いなされませ」。

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晴明のいう「災い」のひとつが、鴨川の堤の決壊だというわけだが、気になるのは「よいもの」「お宝」とはなにか、であろう。それは6月30日放送の第26回「いけにえの姫」で明らかになる。

都は洪水に続いて大地震に襲われる。そこで安倍晴明は、今度は具体的に説く。続く天変地異を収めるためには、道長の長女である彰子(見上愛)を一条天皇のもとに入内させるしかない、と進言するのである。

道長は「立派な人」として描かれているが

「光る君へ」では、道長は政権のトップの座に就いて以降も、相変わらず「立派な人」として描かれている。そして、脚本家は当面、その路線を維持するつもりなのだろう。道長は天変地異を収束させるための「いけにえ」として、愛する長女をやむなく、一条天皇のもとに差し出す――。そんなふうに描写されるようだ。

だが、道長が彰子を差し出そうと考えたのは、天変地異云々が原因ではない。あくまでも自分のためであり、家のためであった。