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藤井は「本当にありがたい存在」

 取材の1か月ほど前には新人王戦で優勝を飾っており、手応えを感じ始めていたのか、藤井への率直な気持ちも口にしている。

「公式戦で早く指したい棋士はやっぱり藤井さんです。(藤井の存在は)ありがたいことだと思います。どこまでいってもモチベーションが尽きないというか。(藤井からタイトルを獲ったら気持ちに変化は?)そうなればいいですけども(笑)。本当にありがたい存在です。(藤井を意識することで、同世代が引き上げられていくことは?)どうなんでしょうねえ、そうなればとは思いますけども」

 これからの将棋界をどう見るのかという質問には、こう答えていた。

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「藤井さんにタイトル戦で誰が勝つのか、どう戦っていくかというのが焦点なんじゃないですかね。タイトル戦だと、本当に安定した成績ですから。(自身のタイトル挑戦は意識しているのか?)まだそれに手が届くところまで全然行っていない。予選を抜けたこともないので。まずはそういう舞台に立てるようにというところですけども。(藤井に挑むために必要なものは?)やはり技術的なところがかなり差がついていると思うので、そこを埋めないとどうしようもない気がしています」

 

記録係を務めた最高峰の舞台

 メディアは、藤井と伊藤を子ども時代からのライバルとして取り上げてきた。2人が対戦し、負けた藤井が大泣きする映像は何度もテレビで流された。

 だが実際に対戦したのは一度だけだったという。

「藤井さんを意識したのは、小学3年の小学館の大会(小学館学年誌杯争奪全国小学生将棋大会)くらいで、そこでしか顔を合わせたことはなかったかな? 自分はその大会以降は予選落ちばかりしていた気がします。それ以来、全国大会には全く縁がなかった。小5くらいのときは、何の代表にもなっていなかった気がします。明らかに格下の子に負けていた気がする」

 その後、藤井は小学4年で奨励会に、伊藤は5年生で入会した。関西と関東に分かれてはいたが、先をいく藤井の存在を意識し続けていた。

 2018年2月17日第11回朝日杯将棋オープン戦にて、藤井聡太五段(当時)が優勝を果たしたとき、伊藤は記録係を務めていた。中学生での全棋士参加棋戦優勝は初めてのことであり、大きなニュースとなる。ちなみに藤井は2月1日の順位戦で五段昇段を決めたばかりだったが、この優勝により同日付けで六段昇段となる。五段の期間はわずか16日間であった。