受験で進学するも1ヶ月で辞めた高校
中学3年で三段昇段を果たした伊藤は、高校に進学した。
「12月に三段リーグ入りを決めて3ヶ月ほど時間が空いたので、まあ、だったら受験勉強してみようかなと。どれくらいできるのかという感じで勉強しました。(入学して)1ヶ月で辞めました。(中学時代から教えてもらってきた永瀬拓矢九段もすぐに退学しているが)そこは別に影響を受けたわけじゃないです。
そこそこ偏差値の高い高校に行ってしまったので、課題とかも多くて面倒になってしまった感じでした。そうでなくても辞めていた可能性はあると思いますけど。高校くらいは行ったほうがいいのかなと最初は思っていたんですが、入ってみると厳しいなと感じて。親に相談して、最初は結構反対されたんですけど、その日のうちに押し切って。次の日くらいに退学届をもらった気がします。その週末に出しました。学校側に止められることはなかったです。『どうして?』という感じだけで。棋士を目指すことに対しては理解してくれたと思います」
悔しかった西山三段との対局
三段リーグ4期目の最終戦は、大きな注目の中で行われた。伊藤には昇段の可能性はなかったが、対戦相手の西山朋佳三段(現女流三冠)はその時点で13勝4敗で、勝てば女性初の棋士が誕生する可能性があった。東京の将棋会館には、奨励会の対局とは思えぬほどの多くの報道陣が押し寄せた。結果は西山が勝って14勝目を挙げたが、惜しくも順位差で次点の3位となり昇段を逃した。伊藤は9勝9敗の指分けに終わる。ちなみに、藤井聡太が四段昇段を決めた三段リーグの最終戦の相手は西山だった。
「対局中は普段と変わらずに指していたと思うんですけど、負けて相当に悔しかった記憶があります。(世間の女性棋士誕生への期待によるプレッシャーは)そういうのは全く感じていなかったです。むしろ『止めてやろう』という気持ちの方が強いんじゃないですかね、奨励会員なら。ここは絶対に止めてやろうと。自分が負けて(初の女性棋士が)誕生するのは一番悔しいことなので。(翌期の自分の昇段のバネになったかは)わからないです」