かつては、貧しい家庭の子どもも一生懸命勉強すれば、学費の安い国立大学に進み、給料のよい仕事に就くことができ、親よりも高い社会階層に所属することができるという「立身出世」のシナリオが存在しましたが、それが崩れてきているのです。
東京大学の学生の親の所得が、早稲田や慶應の親の所得と同じか、それよりも高くなって、社会階層の固定化が進み、社会学者で中央大学教授の山田昌弘氏が「希望格差社会」と呼ぶ状況が生まれています。今後、給付金奨学金の拡充も必要ですし、学費の安い通信制大学、通信制大学院の卒業生が活躍する状況にも期待したいと思います。
しかも、特定の学校を卒業した経歴が過大評価されすぎという傾向も大いに疑問です。
政権中枢を文系が占める、憂慮すべき事態
私には、現在の東京大学法学部が、まさにその前身である徳川幕府の昌平坂学問所に見えてなりません。幕末から明治維新にかけて、欧米列強に対抗するために、蘭学や近代的な工業技術、経済学、軍事学などを学ぶ必要があったのに、幕閣トップの老中、若年寄などの家柄の子弟は、神君家康公以来の伝統ある朱子学を学び続けていました。
職務遂行に必要な能力を備えていないリーダーが国の舵取りをするのはあまりにも危険なので、ペリー来航以降、ようやく小栗上野介忠順、勝海舟など、譜代大名ではなく旗本の家柄の武士を重要ポストに登用することになりますが、極めて例外的でした。
同様に、現在の政権の中枢が、東大法学部などの文系学部出身者に占められている事態が憂慮されます。ITやAIなどの情報通信技術、データサイエンス、科学技術の素養が求められる時代に、閣僚や官僚の資質の見直し、人材登用の在り方の多様化が急務です。
さらに言えば、最終学歴と幸福(=ウェル・ビーイング)の相関関係も弱くなっているようです。
「子どもを高学歴に」と親を煽る教育産業
神戸大学の西村和雄特命教授と同志社大学経済学研究科の八木匡教授が、全国の20歳以上70歳未満の男女を対象に行った「生活環境と幸福感に関するインターネット調査」(2018年2月8日~2月13日)は、所得・学歴・自己決定・健康・人間関係の5つについて幸福感と相関するかについて分析を行いました。