文春オンライン

宇宙物理学の第一人者が「UFOは実際に存在しています」と断言する“納得の理由”

『太陽の脅威と人類の未来』より #2

2024/07/10
note

寿岳博士の「超自然現象」批判

 寿岳博士のお父さんは英文学者で書誌学者の寿岳文章(ぶんしょう)さん、お姉さんは京都府立大の教授で随筆家でもある寿岳章子(あきこ)さんという学者一家の寿岳さんは、京大を出た後はアメリカで学位を取って、東京天文台(現国立天文台)で長く奉職されました。

 そういう方ですから、とにかくまじめで「矢追氏のように、証拠がないことをさも本当のように世に広める人を野放しにしておくのはよくない」と義憤に駆られたようです。

 私などは「エンターテイメントとして楽しいのだし、あれはあれで別にいいんじゃないの」と思うのですが、寿岳博士にしてみると、科学的に確立していない話を、あたかも事実であるかのように世の中に伝えていくのは、科学にとってマイナスであるとしか映らなかったようです。

ADVERTISEMENT

 テレビにせよ、UFOの存在を肯定する本にせよ、すでに宇宙人が地球に来ていろいろと活動していると平然と書いている、フィクションとして楽しむならいいだろうけど、中には真に受けてしまう人もいる、そういう間違った知識は正すべきであり、もっと正しい科学的な知識を普及しないといけない——と強く主張されました。

 そして最終的には、「JAPAN SKEPTICS =ジャパン スケプティクス(「超自然現象」を批判的・科学的に究明する会)」という学会を1991年に立ち上げるに至りました。アメリカにある同様の団体を参考にされたようです。

「超自然現象」を批判的・科学的に究明する会の幹事に

 私は1991年10月に愛知教育大から国立天文台に移動したのですが、最初その学会の存在をまったく知りませんでした。移動してから国立天文台の研究室で、ただUFOの話が好きだから、という理由で学生たちと茶飲み話などで宇宙人についていろいろ話をしていたところ、寿岳博士が、

「柴田さんは宇宙人が好きだとかいう話がこちらに伝わってきたが、それは放置できない」

 と、抗議してこられました。

 正直、これには参りました。もちろん、私もわざといかがわしい話を世の中に流そうなどとは思っていません。真実を追求する立場は寿岳博士となんら変わらないつもりです。

 ですから、「本質は寿岳さんと一緒ですよ」と言うと、

「それならJAPAN SKEPTICS の活動を一緒に手伝ってください」

 と、突然監事にされてしまいました。

 そんなことがあったものの、私は今でもUFOが宇宙人の乗り物であるかどうかはともかくとして、未確認飛行物体という現象自体はあると思っています。UFOに遭ったという人に会ったこともあります。残念ながらあまり確かなことはわかりませんでしたが。